注射針の長さと肥満・力士の皮下脂肪厚

2021年3月16日

    2021311日、職場で「安全衛生委員会」があった。毎月、本社・商事・IT・工場・輸送の5部署で、別々にテレビ会議を行なっている。

午前1015分、リモート会議があった。私は「大阪の重症病棟使用率は、28%と4カ月ぶりに30%(62/221人)を下回った。大阪の医療従事者31万人のうち、26万人の新型コロナワクチン接種が、4月末までに始まる。集団接種と個別接種の併用となる」と発言した。

午後0時、大阪の街は緊急事態宣言解除で、活気が戻っている。人気の鯛めしや・つけ麺・中華料理店には行列ができ、ランチがフレンチ6000円、鮨2800円、鰻重3800円、串カツ3000円、焼き鳥3000円の高価格店も開き始めた。私は「博多もつ鍋 あろおん」で、900円の"気まぐれ定食 表示"を食べた。

一昨日(39日)のテレビはどこも、「1瓶あたり5回とされていた接種回数を、注射器を変えることで7回に増やせると、京都の病院が発表した。糖尿病のインスリン用注射器を使えば、2.25ml0.3mずつの7回使える。問題は針の長さが13mmと筋肉注射用に使われる注射器の針25mmより短い。

宇治徳洲会病院では、接種を受ける人の皮下脂肪の厚さを超音波装置で測り、厚さ10mmまでの人にはインスリン用注射器、それより厚い人には通常の注射器で接種している」と放送していた。

 

上腕外側の皮下脂肪の厚さについては、1981年の第2回日本肥満学会で発表した(ヒト肥満症の脂肪組織に関する研究-CTスキャンによる脂肪組織の測定:徳永勝人、石川勝憲、松澤佑次、三木均、垂井清一郎:p1441981)。図 表示は、高度肥満者の上腕CTスキャン像で、1メモリは1cmだ。中央が骨、その周囲の白い部分が筋肉、皮膚と筋肉の間の黒っぽい部分が皮下脂肪になる。

8名の高度肥満者(BMI 42)で、CTスキャンで測定した上腕背側部(図2 表示Triceps CTスキャン)の皮下脂肪の厚さは1860mmだった。全員11mm以上で、高度肥満者ではインスリン用注射器の針は使えない。8名中6名が25mm以上で、高度肥満者では75%の人が筋注ではなく皮下注になる。

力士13名(BMI 36)の上腕外側の皮下脂肪の厚さを、CTスキャンを用いて測ったことがある。0.52.8mmで、3名が10mm以下だった。力士では、13名中3名がインスリン用の注射器を使うことができる。13名中1名だけが25mm以上だったので、大部分の力士は筋注用の針で、筋肉注射をすることができる。

1980年頃、高度肥満者の皮下脂肪厚を、超音波装置で測定することは困難だった。高度肥満者の皮下脂肪は均一ではない。皮膚と筋肉との間で反射して、皮下脂肪の厚さが半分に出てくる。皮下脂肪厚が80mmの高度肥満者では40mm付近で、皮下脂肪厚が60mmの人では30mm付近で反射する。皮下脂肪が厚くなると、脂肪組織を養うため、中央付近に血管網が発達しているのかもしれない。

新型コロナワクチンは、皮下注ではなく筋注になっている。上腕CTスキャンで皮下脂肪の厚さを測定すると、大部分の高度肥満者の皮下脂肪厚は25mm以上で、筋注ではなく皮下注になる。力士では13名中1名のみが、皮下脂肪厚25mm以上であった。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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