高度肥満と新型コロナ重症化

2020年4月28日

  2020427日、世界全体の新型コロナ感染者は2965363人、死者は206265人(致死率6.96%)に増加した。

アメリカの感染者は963379人、死者は5480人で、その内ニューヨーク州の感染者は288045人、死者は22269人となっている。イギリスでは感染者154032人、死者2732人となっている。テレビを見ていると、欧米では救急搬送されて来る感染者の多くが太っている。

肥満が、ニューヨーク市でのCovid-19coronavirus disease 2019:新型コロナウイルス感染症)の重症化リスクになっていることが明らかになっている(NEJM 2020,4,17)。対象は、ニューヨーク市内2つの病院に入院した393人(平均年齢62.2歳)で、その内130人が人工呼吸器をつけている。患者の35.8%は肥満(BMI 30以上)で、肥満者の人工呼吸器は43.4%と高く、肥満の方が重症化しやすい。

イギリスでも、肥満が新型コロナを重症化させると報告されている。イギリス各地のICU(集中治療室)に入った新型コロナ感染者672人中、高度肥満(BMI 40以上)が6.7%、肥満(BMI 30~40)が31.0%、太り気味(BMI 25~30)が34.4%、あわせて72%が肥満となっている。ICUに入った感染者のうち、BMI 25未満57人中24人(42%)が死亡したのに対し、高度肥満者46人中28名(61%)が死亡しており、高度肥満では致死率が高くなっている。

日本でも、高度肥満と新型コロナ肺炎の症例が、大阪急性期・総合医療センターの井藤英之らにより「高血圧・高度肥満を有しながらもシクレソニド吸入を行ない、良好な経過を得た新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)肺炎」のタイトルで報告されている(2020,3,30)。

症例は40歳代の男性で、主訴は発熱・咳嗽・呼吸困難感、既往歴は高血圧、喫煙歴は40歳まで40/日。現病歴は、発症10日前から複数回、大阪市内のライブハウス発症者と接触歴あり。発症日より発熱があり、A医院を受診し抗生剤の処方を受ける。咳嗽も出現し解熱しないため、発症4日目にB病院を受診し臨床的にインフルエンザと診断。発症6日目にB病院を再診し、CTスキャンで両側肺野にスリガラス様陰影を認め、PCR検査を施行。7日目には息切れを自覚するようになり、PCR検査も陽性で当院入院となった。

入院時現症は、165cm、体重116kgBMI 42.6、体温37.9℃、SpO2(酸素飽和度)88%。入院時より低酸素血症と考えられ、2L酸素投与開始するとともにシクレソニド(吸入ステロイド)400㎍吸入12回を開始。5L酸素投与が必要となるまで増悪したため、シクレソニドを8時間間隔で投与。以後、進行を認めず、第2病日4L、第4病日2L、第5病日酸素投与終了。PCR検査が連続陰性となり、第9病日退院となった。

考察に、"高度肥満は気管内挿管や抜管困難化につながりやすい"とある。市立伊丹病院時代、140kg・腹囲140cm20歳代高度肥満女性が肺水腫で、ICUへ救急入院したことがある。高度肥満者では気管挿管が難しい症例が多く、麻酔科に頼んで気管挿管してもらったことがある。

高度肥満者では、Covid-19が重症化しやすい。欧米で、新型コロナ死亡者が多いのは、高度肥満が多いことによるのかもしれない。高度肥満者は、新型コロナウイルスに感染しないよう、より注意が必要だ。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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