糖尿病近畿地方会と「紀州の先人に学ぶ」

2019年11月13日

    2019119日、大阪国際会議場で「第56回日本糖尿病学会近畿地方会(会長:佐々木秀行和歌山医大教授)」が開催され、2000名が参加した。

午後210分、南條輝志男元和歌山医大教授による特別講演「糖尿病医療の将来展望~紀州の先人に学ぶ」があった。

南條輝志男氏は「紀州には、3人の偉大な先人がいる。華岡青洲は、紀州の田舎に塾を作り、2000人の門下生がいた。エーテル麻酔ができる40年前の1804年、世界初の全身麻酔に成功した。華岡青洲の好んだ言葉に"活物窮理"がある。活物窮理とは、"自然界に存在する万物を注意深く観察し、それから得られる情報を活かし、真理を追窮すること"だ。

紀州田辺市出身の南方熊楠は、世界的な粘菌学者で、Natureに多数の論文を載せている。昭和4年、南方熊楠は田辺湾の戦艦長門の艦上で、昭和天皇に御進講をし、2人で記念撮影をされている。

和歌山医大初代学長の古武弥四郎は、阪大出身で世界的な生化学者だった。古武先生は"本を読まなくてはならぬ。考えても見ねばならぬ。しかし凡人は働かなくてはならぬ。働くとは天然と親しみ、見つめることである。かくして天然が見えるようになる"という言葉を残されている。

3人の共通点は自然・病人を注意深く観察すること、すなわち"活物窮理"の重要性を唱えたことだ。私は、紀州の先人の残された言葉から、糖尿病患者を注意深く観察することにより、"新しいインスリン異常"を発見することができた」と講演された。

南條輝志男先生には和歌山に2度招かれたことがある。研究会では特別講演「内臓脂肪型肥満」を、学会ではシンポジウム「肥満の体質とその対策」をした。学会の夜は、同じテーブルで、荒木栄一熊本大教授らと鍋料理を食べた。

午後530分、下村伊一郎阪大教授による指定講演「脂肪由来善玉因子・アディポネクチンの臓器保護作用発現機構について」があった。海外の論文を紹介するだけの講演が多い中、下村教授(田辺市田辺高校出身)の講演は、紀州人らしく、最先端のオリジナルなものばかりだった。難しい内容を、とてもわかりやすく説明されていた。

3日前の116日、大阪市中央区で異業種の会があり、ベンチャー社長・新聞記者・公認会計士らと食事をしながら話をした。ダスキンの友人もいたので、私は「3カ月前、下村伊一郎阪大教授がメタボ講演の中で、ダスキンの名前を出されていた(メタボ教室第741段「内臓脂肪研究の歴史」)。

脂肪組織から分泌されるアディポネクチン(APN)は、T-カドヘリン(T-cad)とくっつきエクソソームに入り、老廃物を排泄する。APN/T-cad複合体は、ダスキンのような働きをしており、脳にも入る。アルツハイマー認知症で蓄積するアミロイドβを掃除すると、認知症が改善するかもしれない。可能性は12%以下と低いが、認知症の特効薬ができたらノーベル賞も夢ではない」と話した。

最近の学会は、オリジナルなものが少なく、研究主体から教育主体になってきている。研究所所長をしている大学のクラスメートは「日本の医学研究は、中国に抜かれ、インドにも抜かれようとしている」と言う。華岡青洲など"紀州の先人"が、世界初の医学研究を残したように、再び日本の医学研究が活発になることを願う。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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