心房細動の増加は、肥満の増加による!

2019年2月 4日

    2019212日、新横浜プリンスホテルで「第47回日本総合健診医学会」があり、1200名が参加した。

21日午前955分、若手奨励セッションがあった。みどり健康管理センターの佐藤千夏らは「当センター46年間における肥満・心房細動の経年変化と両者の関連について」のタイトルで、「19724月から20183月まで、当センター健診受診者延べ821315名(男性555503名;平均年齢49.2歳、女性265812名;平均年齢47.8歳)を対象に、46年間の長期にわたる健診結果を用いて、肥満と心房細動との関連を検討した。

BMI25以上の肥満者は男性で増加しつづけ、46年間で16.4%から32.9%へ2.0倍になったが、女性では15.6%から15.8%と変化はなかった 表示。心房細動の頻度は男性で増加しつづけ、46年間で0.10%から0.69%と6.9倍になったが、女性では0.08%から0.06%と変化はなかった 表示50歳代、60歳代、70歳代以上の年代別に検討しても、男性の心房細動は46年間増加していた。

高血糖・総コレステロール高値・中性脂肪高値の割合は、46年間大きな変化はなく、高血圧の割合(投薬を考慮しない)は2000年頃より低下傾向にあった。

次に、肥満およびその合併症と心房細動との関係を、2017年度受診者延べ17037名で検討した。BMI25以上の肥満者 表示や、男性腹囲85㎝以上、女性腹囲90㎝以上の内臓脂肪蓄積者は男女とも心房細動を高頻度に合併していた。高血圧群(降圧薬服用含む) 表示、高血糖群(糖尿病薬服用含む)、高中性脂肪群 表示、低HDLコレステロール群では、正常群に比べ心房細動を高頻度に合併していた。飲酒群と非飲酒群との間には、差がなかった。心房細動を年代別にみると、心房細動の頻度は、男性では50歳代から、女性では70歳代から急速に増加していた 表示

肥満が増えた男性で心房細動が増加し、肥満が増えなかった女性では心房細動が増加しなかったことより、心房細動は肥満が増えたために増加したと推測された」と発表された。

心房細動があると、心房内にできた血栓が血流にのって脳の血管に詰まり、脳塞栓による脳梗塞を起こしやすくなる。心房細動による脳梗塞は広い範囲に脳の壊死を起こすため、意識障害や片麻痺など重篤になる。心電図をとる最も大きな目的は、心房細動の有無をみることで、心房細動があればアブレーション手術や血栓を溶かす薬を投与することによって、重篤な脳梗塞を防ぐことができる。

心房細動の危険因子は、年齢、男性、肥満とされている(Circulation 2017)。日本のメタ解析(吹田研究・CIRCS・久山町研究)での心房細動発症因子は、年齢、男性2.06、肥満1.65、高血圧1.62、飲酒となっている(AHA 2016)。肥満者の心房細動は、10%の減量で持続性から発作性へと改善したり、消失したりすることが報告されている(Europace 2018)。

午後530分からの懇親会で、大会長奨励賞の表彰式 表示があった。

心房細動は、脳塞栓による重篤な脳梗塞を引き起こす恐い不整脈だ。心房細動の発症には、加齢・性とともに肥満が大きく関与している。この46年間で、人間ドックでの男性の肥満は2.0倍に、心房細動は6.9倍に増加していた。心房細動を減少させるには、肥満を予防・治療することが重要だ。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

著作権について