阪神西宮のふぐ料理と健保組合崩壊

2018年3月17日

    2018313日、兵庫県西宮市阪神西宮駅北側にある日本料理「木曽路」で、医療者仲間とふぐ料理を食べた。

午後630分、とらふぐのてっぴ、てっさを食べながら話をした。臨床現場で働いている医療者の生の声を聞くと、新しい発見があって興味深い。元同僚は、「入院患者全員に、PET検査を行っている病院がある。過剰診療ではないか」と言う。

PET(陽電子放射断層撮影)は癌を発見する検査で、保険適応され175000円と高い。PET検査施設が増え過ぎて、採算が合わなくなっている。陽子線治療施設も、全国に13か所でき過剰になり、患者集めに必死だ。これでは医療費は、増大する一方だ。需要に合った設備供給が必要だ。

ふぐ白子焼き、ふぐ白子天ぷらが旨い。市立伊丹病院時代の医局新年会は、阪神西宮駅南側にある"ふぐ料理専門店"で、ふぐ白子焼きを食べるのが恒例になっていた。

私が「医師の地域偏在・診療科偏在が、加速している。医師の4.5人に一人が、東京に集まっている。どうしたらいいか」聞くと、中堅後輩医師は「東京の保険医の数を制限すればいい。東京の過剰な医師を、地方に分散することができる」と答えた。若手後輩医師は「診療科ごとに人数を決めて、成績がいい人から順番に選んだらいい。診療科の偏在はなくなる」と答えた。若い医師は、スーパーローテートのマッチングで、成績順に選ぶことに慣れているのだろう。

私は「日本国憲法第22条にある"職業選択の自由"をたてに反対する人がいるが、第22条には"公共の福祉に反しない限り"と但し書きが書いてある。学校の先生や警察官がどんな僻地にも行く義務があるように、医師も同様にすればいい。国か、日本医師会か、地方自治体が強制的に行わないと、医師の地域偏在・診療科偏在は解決しない」と話した。

ふぐ唐揚げ、てっちり、雑炊が美味しい。「人工透析をしている医療機関が、老健施設に行って無料で採血し、クレアチニンの高い腎機能不全の人を見つけ、人工透析を行っている。高齢のアルツハイマー認知症の人にも行っている」と言う。人工透析施設は増え過ぎて、患者の奪い合いになっている。

私が「医療費には限りがある。人工透析の保険適応を80歳以下にするなど制限したらどうか」聞くと、中堅後輩医師から「家族の中には、患者の年金で暮らしている人もいる。認知症でも、少しでも長生きをすることを望んでいる。人工透析は年間500万円かかるが、保険適応になっていて本人負担は少ない」と、予期せぬ答えが返ってきた。

2017年度の日本の経済状況は、戦後2番目に長い好景気となっているが、健康保険組合を取り巻く状況は厳しい。全組合の7割にあたる1015組合が赤字組合となっている。赤字の最大の要因は、高齢者医療への拠出金負担の増加だ。

現在、解散予備軍とされる健康保険組合("協会けんぽ"の平均保険料率10%以上の組合)は、316組合にのぼっている。1992年には1827あった健保組合は、2017年には1398組合に減少した。現行の高齢者医療制度が続く限り、早晩、健保組合の財政が行き詰まり、解散に追い込まれる組合が続出することが危惧される。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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