医師の過重労働と地域偏在・応召義務

2018年1月30日

    201812627日、名古屋市にある"愛知県産業労働センター(ウインクあいち)"で、「第46回日本総合健診医学会」が開催され、1172名が参加した。

126日午後140分、佐藤典久メディカルトラスト取締役事業部長による講演「労働災害の現状把握と13次労働災害防止計画にみる"必要とされる産業医業務"」があった。佐藤氏は島根県出雲市出身で、厚労省労働基準局安全衛生部よりの受託事業をされている。

佐藤典久氏は「平成24年度からの第12次防では、死傷災害(休業4日以上)は全体では1.4%減少したが、陸上貨物運送事業は1.0%、小売業は2.6%、飲食店は9.5%、社会福祉施設は27.8%増加した。29年度からの第13次防では、人手不足が深刻なこれら業種を重点的に行っていく。

医師の時間外労働規制は、5年先送りになった。日本病院会、特に救急医と産科医が不足している地方の基幹病院が強く反対した。医師には応召義務(医師は正当な事由がなければ、診療の求めを拒んではいけない)があり、時間外などの理由では診療の求めを拒否できない。今年、来年と中間報告があるが、5年後、10年後にできるかも見通しは立っていない」と話された。

10年前、近畿都市圏の新規開業の半分は、中国・四国・九州の基幹病院(県庁所在地以外)の勤務医だった。開業斡旋業者の出現により、地方勤務医が大都市圏で開業することが容易になり、都市近郊でのビル開業が増えた。地方基幹病院の崩壊が始まると危惧していたが、その通りになった。

 

午後315分、國田武二郎愛知学院大学教授による講演「両立支援」があった。國田教授は弁護士もされている。

國田武二郎教授は「日本は少子高齢化社会で、労働力不足になっている。育児と仕事、介護と仕事、に対し両立支援をしなければならない。2012年総務省の調査では、月80時間を超えて残業する人の割合は、全体の14.0%に対し、医師は41.8%と多く、運転手39.9%、飲食業34.4%、教員23.6%、農林水産業18.7%、研究者11.2%となっている。

2001年、大阪にある医療機関の看護師が過労死した。医療機関は、残業月300時間までの36(サブロク)協定を結んでいた。国の過労死認定基準(100時間)の3倍にあたる。36協定は、労使が時間外・休日労働に関して労働基準監督署に届け出る協定で、法定労働時間(18時間、週40時間)を超える場合に必要となる。

過労死と労災認定された東京の研修医は、1か月の時間外労働173時間、休日は6ヵ月で5日だった。この医療機関は、3か月間で600時間まで時間外労働を可能にする協定があった。新潟の病院研修医が過労死したが、1か月178時間の時間外労働をしていた。

医師の特殊性は応召義務にあり、長時間労働の一因となっている。医師の働き方改革に関する厚労省の検討会が2018115日開かれ、"応召義務"が今後の論点として挙げられた。応召義務は明治時代に作られた法律で、現代社会には合わない」と話された。

医師の過重労働を改善するには、応召義務の法改正、医療従事者と国・自治体・地域住民が一体となった抜本的な対策が必要である。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

著作権について