高額医療機器と市立病院経営赤字

2017年7月17日

    2017715日、大阪府下にある歯科医院に治療に行った。インプラントのための医療機器など、高額な歯科医療機器が備えられていた。

先月(20176月)初旬、メガバンク元頭取・大手商社代表取締役・大手製薬会社会長・大学教授ら11人で会議をした。緊張感のある会議の後、食事をしながら財界トップの人たちと世間話をするのは楽しい。メディアでは伝えない、私の知らなかった世界が広がる。

前菜は"真鯛のカルパッチョ キャビア添え"と"オマールエビと帆立貝柱のポアレ"の2品、魚料理は"鮃のポワレ レモン風味"、肉料理は"国産牛ロースのロティ"だった。

 経営危機に陥っている東芝問題が話題になった。「東芝は、最も稼げる東芝メディカルをキャノンに売却した。半導体部門も売ろうとしている」、「キャノンの社名は、観音(かんのん)さんからきている。キャノンの初代社長(御手洗毅)は、北海道大学医学部出身の産婦人科医で、ルーツの医療の分野がやりたかったのだろう」と言われる。

私は「医療機器の値段は、あってないようなものだ。医療機器の利益率はすごい。私立医療機関は、定価10億円の高性能CTスキャンを、2000万円で購入している。98%引きだ」と話した。「98%引き?医療機器の定価は、何故そんなに高いのか」と聞かれ、「公立病院の高額医療機器は、ほとんどリースだ。私立の病院は値引き交渉できるが、公立病院は価格を公にしないといけないので値引きができない。定価を高くしておくと、リース代を高く設定できる」と話した。

会食の後、大手繊維メーカー社長が私の所に来られ「今日はいい話を聞かせてもらいました。目から鱗でした」と言われた

開業医の友人は「定価1億円のエコー(超音波)を、90%引きの1000万円で購入した」と言う。独法化した公立病院幹部の友人は「心カテ140万円で購入していたが、独法化したら半額で購入できるようになり、赤字が一気に大幅黒字になった」と言う。

平成28年度の日本の病院の医療機器費用(減価償却費・保守費)は、1年間で19121億円、IT関連費用は6848億円で、計25969億円となっている。平成27年医療費415000億円のなかの病院分262072億円のこれは9.9%を占める(日本病院会誌20176月号p18)。

100床当たりの医療機器費用(減価償却費・リース料・保守費)は、国立病院13530万円、公立病院160万円、私立病院5490億円となっている。市立病院など公立病院は、私立病院の2倍近い金額をメーカーに支払っている。多くの市立病院は、市から年間812億円の補助を受けているが、補助金は年々低くなっている。皺寄せを受けるのは、そこで働く勤務医だ。

医療機器の世界市場は2530兆円とされ、急速な成長を遂げており、10年後には自動車市場に近づくともいわれている。高額医療機器の増加は、病院経営赤字の一因となっている。

OECD35か国で、医療費の伸びが特に急峻なのは、日本とアメリカで、高額薬剤や高額医療機器が影響している。限られた医療費の中、市立病院など病院勤務医の低賃金・過重労働は、さらに進むものと憂慮される。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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