メタボリック教室と糖尿病・X遺伝子

2015年6月 7日

   201561日、66歳の誕生日を迎えた。

息子からの誕生日祝いは、熊本球磨米焼酎「豊乃都鶴」で、娘からは「LAB化粧品セット」が送られてきた。この歳になると、誕生日はそれほど嬉しいものではなくなってくる。11年余命は短くなっていく。

メタボリック教室も200661日から開始して、丁度9年になる。高槻社会保険健康管理センターから依頼され始めたもので、健康に役立つもの、社会に役立つもの、読んで興味を持てるものを目指してきた。個人や、特定の組織を誹謗中傷しないよう心掛けてきた。

先月、下関で開催された日本糖尿病学会で、「ターナー症候群と肥満糖尿病」の一般演題があった。ターナー症候群は、X遺伝子が1つしかない遺伝性の疾患で、翼状頸・低身長・手指短縮などの特徴がある。

X遺伝子が3つあるダウン症候群は、逆に糖尿病になりにくい。「糖負荷試験をすると、一般の肥満児に比べ、ダウン症候群の肥満児の耐糖能はいい。X遺伝子には糖尿病を防ぐ作用があるのかもしれない」と、19816月に岡山で開催された日本内分泌学会で報告した。

XX遺伝子の人に比べ、Xだけのターナー症候群では糖尿病になりやすく、XXXXが一つ多いダウン症候群では同程度の肥満でも糖尿病になりにくいのは、糖尿病とX遺伝子との間に関連があるからだろう。後輩の糖尿病専門医に聞くと、「糖尿病とX遺伝子との関係は、明らかになっていない」と言う。

 

ターナー症候群は、阪大で第二内科を選んだ要因の一つでもある。阪大2内は臨床に強く、学生への講義も患者中心だった。その時入院している患者さんを中心に組み立てられていた。症例の病歴提示の後、患者さんが歩いて階段教室に入って来る。

バセドウ病・クッシング症候群・末端肥大症など内分泌疾患は体型で、パーキンソン病・チック・ギランバレー症候群など神経疾患は歩き方やハンマーだけで診断できるものが多かった。

昭和49年(1974年)卒の「49卒業記念文集」に、私はターナー症候群の患者さんの曲 表示を載せている。

「どんな医者になっても患者の立場になって考えるということが大切だと思います。そこで二内522日の臨床講義の患者さんを想い浮かべながら、この曲を作りました。

若い医者のためだと言われ、私はみじめな姿をさらけ出す。

200の瞳がこちらを向くと、私の心は震えるの。

それでも私は逃げたりしないわ。

この人たちの誰かがきっと、私の病治してくれる」

200の瞳というのは、同級生が100人いたからだ。41年後の今も、ターナー症候群の予防や治療法はまだない。歳をとっても、患者の痛みがわかる医師でありつづけたい。

メタボリック教室を読むのを、楽しみにしてくれている人たちがいる。書くことは、脳を活性化させ認知症を防ぎ、ストレス解消にもなる。私に書きたい意欲のある間は、このブログをつづけたい。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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