「ゲノム創薬の現状と展望」と老後生活

2015年6月14日

   2015611日、大阪市中央区淀屋橋にある大阪倶楽部で異業種の会があった。この会も、入会して7年になる。

午後6時から、摂南大学薬学部元教授の伊藤文昭氏による講演「ゲノム創薬の現状と展望」があった。

 

伊藤氏は、「2004年全ヒトゲノム(遺伝子)が解析された。ゲノム創薬は、病気になる原因となる遺伝子が作る蛋白を見つけ、その抗体から薬を作る。

世界で最も売上が多いのはヒュミラ(TNF-α抗体薬)で、1兆数千億円になっている。医薬品売り上げの上位10品目のうち、6つはゲノム創薬のバイオ医薬品だ。日本は全ヒトゲノム解析後、ゲノム研究費が削減され、ゲノム創薬の開発に乗り遅れた。

一つの新薬を出すのに484億円が必要になる。バイオ医薬品は、分子標的がわかれば創りやすい。世界の製薬会社は、バイオ医薬品を開発している。バイオ医薬品は、効果を確かめるのが難しいので、ジェネリックができにくい。

癌の治療薬も、ゲノム創薬の進歩で、たくさんできてきている。癌はゲノム塩基配列中に一塩基が変異した一塩基多型(SNP)によって起こることが多い。癌のSNPがわかれば、その癌の分子標的に応じたテーラーメードの医薬品ができる。肺癌や肝癌に効果のある分子標的医療薬も、それぞれの癌によって異なり、ゲノムを調べて治療薬を決めると効果がある」と話された。

 

世界の医薬品売上高ランキング(2012年)は、1ヒュミラ(関節リウマチ)、2レミケード(関節リウマチ/クローン病)、3エンブレル(関節リウマチ)、4位アドエア/セレタイド(抗喘息薬)、5位クレストール(抗高脂血症薬:日本)、6リツキサン(非ホジキンリンパ腫)、7位ランタス(糖尿病薬)、8ハーセプチン(乳癌)、9アバスチン(転移性結腸癌)、10位ジャヌピア(糖尿病薬)、11位ディオパン(降圧剤)、・・となっている。

 

午後710分から懇親会があり、フランス料理フルコースを食べながら、近くに座っている人たちと2時間話をした。リタイアしても、元気な人が多い。70歳代のA氏は「ダイビングをしている。35メートル潜った」と言われた。

B氏は「マチュピチュ、南極に行ってきた。今度は、100日間世界一周の船旅をする。現役時代は忙しく、妻とどこにも行けなかったので、奥さん孝行をしている」と話された。

するとC氏は「奥さんは迷惑がっているかもしれませんよ。私が家にいるようになって、かかってくる電話をとると、みな妻へのものだった。家に私がいることに遠慮して、電話がかかって来なくなった。妻のこれまでの人間関係を崩さないよう、私は会員制クラブに入り、月曜から金曜まで、朝から囲碁・麻雀・カラオケ・ビリヤードをしたり、ゴルフに行ったりしている」とアドバイスされた。

 

ゲノム創薬の進歩で、一部の癌も治るようになり、寿命が延びてきている。女性は友人関係を築いている。男性は仕事を離れても楽しい老後生活ができるよう、趣味を持ち、仕事以外の友人を作っておくとよい。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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