脂肪組織の形態学とメタボリックシンドローム

2013年7月25日

    201371819日、東京西新宿にある京王プラザホテルで、「第45回日本動脈硬化学会(及川真一会長)」が開催された。

 

7181250分、社員総会(評議委員会)があった。「内臓脂肪測定・アポ蛋白B48・スモールデンスLDL3項目を保険適応になるよう、学会から厚労省に申しこむこと」が採択された。

 

午後3時、一般演題の座長をした。東大循環器内科の西村智氏による「生体二光子イメージングで明らかになる肥満脂肪細胞組織における免疫・炎症性細胞のクロストーク」があり、「内臓脂肪の炎症はメタボリックシンドロームを引き起こす。肥満脂肪組織の炎症にはT細胞が関与し、B細胞は関与していなかった」と報告された。

 

生きている肥満マウスを台に載せ、脂肪組織を観察されている。脂肪組織の毛細血管内にある赤血球・白血球・血小板・上皮細胞・マクロファージが、蛍光物質をトレーサーとして色分けされ、脂肪細胞の間を毛細血管が走っている。肥満学者として、肥満者や肥満動物の脂肪組織を何百例と顕微鏡で観察してきたが、生きた動物の脂肪組織を視ることができることを知り、技術の進歩に驚いた。

 

30年前は、脂肪組織を凍らせて切片にし、観察するフローズンカット法を用いていた。凍結した脂肪組織の肥大した脂肪細胞は、面と面がくっつき多面体となっていた。この方法を開発したスウェーデンのシェーストレーム教授は、7人目のヴィレンドルフ賞(国際肥満学会最高賞)を受賞されている。写真 表示で、私と話をしているのがシェーストレーム教授夫妻だ。

佐賀医大の杉原教授が電顕で観察された肥大した脂肪細胞も、多面体となっていた。生きた状態での肥満マウスの脂肪細胞も多面体だが、やや丸みがあり、脂肪細胞の間にある血管構造など立体的で、詳細な構造がわかる。

 

「肥満者で高血圧が合併しやすいのは、脂肪組織の毛細血管が肥大した脂肪細胞の面と面の間で圧迫されるのも一因と考えられるが、肥満による高血圧に物理的要因があるとしたら、何が考えられますか」と質問すると、西村氏は「脂肪組織が増大し、血流量が増加していることも、血圧上昇に関連しているかもしれません」と答えられた。

高度な光学技術を用いられていたので、「理学部か工学部の出身ですか?」と聞くと、「医学部出身です」と答えられた。この研究には、ニコン・ヨコガワ・オリンパスなど5社が関わっていた。

理学・工学の発達で、生きた脂肪組織の形態を観察することができるようになり、メタボリックシンドロームの病態解明も、さらに進むことだろう。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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