映画「アンナ・カレーニナ」とロシアの肥満・糖尿病

2013年4月15日

    2013410日、ロシアの文豪トルストイ原作映画「アンナ・カレーニナ」を観に行った。

午後610分、館内は50歳以下の若い人が多く、高齢者は私だけだった。1870年代、ロシア帝政時代のペテルブルグの上流社会、モスクワの労働者、田舎の貧しい農民の姿がよくわかる。

 

ジョー・ライト監督によるイギリス映画で、主役のアンナ・カレーニナをキーラ・ナイトレイ28歳、政府高官の夫アレクセイ・カレーニンをジュード・ロウ40歳、不倫相手のヴロンスキー伯爵をアーロン・ジョンソン22歳が演じている。神の掟をやぶる2人の罪に、はたして罰が下るのか。

 「何もしないで悔いるより、やって悔いる方がましだ」というセリフは魅力的だ。若い頃は"燃え尽きるような恋"に憧れていたが、63歳の今は"家族や周囲に迷惑をかけてまで愛を貫くのはよくない"と見方が変化した。45歳の若いトルストイだったから、この作品を書けたのだろう。

「単純な仕事をしている人の方が、幸福に見える」という言葉は、現代社会にも当てはまる。田舎での平穏な生活で、幸せな家庭を築くリョーヴィンとキティの生き方は、トルストイが理想としていたものかもしれない。

 

ロシア文学は、私が大学教養部時代のころ流行っていた。19681970年に阪大、京大、大阪教育大生らで作った文芸同好会「よまん会 表示」では、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」「罪と罰」やトルストイの「戦争と平和」などが人気だった。当時はパソコンもなく、ガリ版の手作りだった 表示

 

ロシアの若い女性は綺麗だが、30歳を超えた女性は太っているというイメージがある。調べてみると、やはりロシアでは女性の肥満頻度は20.1%と、男性の肥満頻度11.8%に比べ2倍近く高かった(WHO肥満国際比較2012)。ロシア保健省は、肥満の原因を「高カロリーで脂肪分の多い食品の食べ過ぎと、運動不足による」とみている。

 ロシアの糖尿病人口(2079歳)は、1270万人で世界5位となっている。女性の糖尿病は742万人で、男性の糖尿病527万人に比べ多い(IDF糖尿病アトラス2012)。

日本の糖尿病人口は、世界9位の710万人で、男性は453万人と、女性の258万人に比べ2倍近く多くなっている。BMI30以上の肥満が少ない日本で糖尿病が多いのは、日本人のインスリン分泌能が低く、少しの内臓脂肪増加でも糖尿病になるためと考えられる。

 

ロシアの肥満・糖尿病の特徴は、日本と異なり、女性の方が男性に比べ多いことだ。日本の男性は、エネルギー摂取に関心を持ち、運動不足を解消して、内臓脂肪型肥満・糖尿病を予防する必要がある。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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