LDLコレステロール測定:直接法か計算式か

2012年9月 4日

    201291日、ゲリラ豪雨の中、ホテルグランヴィア大阪の名庭(なにわ)の間で、「第34回関西総合医学懇話会」が開催された。

 

一般演題の座長をした。ベルクリニックの木村敏世らによる「食事による脂質値への影響」では、12時間絶食後のLDL-CLDLコレステロール)値に前日の食事の影響が出るかどうか、中性脂肪(TG400mg/dl未満の症例で比較されていた。「フリードワルドの計算式(総コレステロール-HDL-CTG/5)でのLDL-C値は、男性で21%、女性で6%の人に乖離が見られ、予想以上に前日の食事の影響が出る」と述べられた。

 

南大阪総合医療センターの桑山和哉らによる「健診における動脈硬化指数の検討」では、超遠心法によるLDL-Cを測定し、直接法と計算式によるものと比較検討されていた。超遠心法によるLDL-C値は直接法とほぼ一致し、計算式とは乖離があった。

私が「動脈硬化学会ガイドライン2012では、計算式のみになっているが」と質問すると、「7つの測定キット会社で、測定値が異なる。動脈硬化学会が計算式のみにしたので、各測定キット会社は危機感を持っている」と答えられた。フロアから「日本総合健診学会ではLDL-Cの測定に、直接法でも計算式でも、どちらを使ってもいいことになっている」とコメントがあった。

 

今年7月、ヒルトン福岡シーホークで第44回日本動脈硬化学会が開催され、720日午後420分からメイン会場でシンポジウム「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012」があった。

私はフロアから、「LDL-Cの測定法について。前回のガイドライン2007では、フリードワルドの計算式、または直接法での測定になっていたが、ガイドライン2012では計算式だけになっている。健診施設によっては直接法で測定している所もあるが、これからは計算式だけになるのか」と質問した。

座長の寺本民生ガイドライン作成委員長(メタボ教室第59段「文豪ゆかりの宿」)は、「前回のガイドラインでは、まずフリードワルド式による計算法を推奨し、直接法についても可としてきた。しかし、直接法の測定キットが複数ありキット間に不一致があること、TGが高値を示す場合には同一キットにおいても標準値との乖離が認められることなどから、ガイドライン2012では、一般臨床においては原則としてフリードワルド式によるLDL-Cを用いることとした」と答えられた。

 

多くの健診施設や医療機関では、LDL-C測定に直接法が用いられている。しかし、直接法には各メーカーによって値が異なるという問題点があり、標準化が必要だ。日本で提唱された内臓脂肪型肥満の概念が世界に広まったように、日本で開発されたLDL-C測定法が世界に広まることを望む。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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