映画「わが母の記」と認知症

2012年5月 8日

    201254日、映画「わが母の記」を観に行った。

原作は井上靖の自伝的小説で、老いた母の80歳から89歳までが描かれている。井上靖は敦煌、風林火山など歴史小説で知られているが、学生時代に教科書で習った「あすなろ物語」が思い浮かんだ。

 

作家の伊上洪作(役所広司)の母八重(樹木希林)は、次第に記憶が失われ認知症になり、徘徊するなど周囲を困らせる。主人公は、幼い頃母に捨てられたと思っていた。母は息子の書いた手紙を大切に保管しており、息子がそれを知り涙ぐむ場面では、館内いたる所からすすり泣く声が聞こえ、中には大声で泣いている人もいた。

 

映画は封切られた時が旬で、多くの観客と感動を共有できる。最近7年間で150回近く映画館に行ったが、この数年、DVDを借りて観た映画はスピルバーグ監督の「シンドラーのリスト」だけだ。映画は映画館で見る方が楽しい。

 

認知症はもの忘れなどに加え、妄想・徘徊・意欲低下などが起こる。薬物による完治が望めない現在、家族による介護が必要となるので大変だ。

私の知人は「子供や孫と一緒に住むのは面倒だ。一人で、のんびり暮したい」と、床暖房付きの高級マンションに住み、羨ましく思っていたが、数年後、認知症になった。老後は、何の苦労もない生活より、適度なストレスがあった方がよいのかもしれない。

 

認知症患者が増えている。その主な原因は高齢化だ。20124月、WHO(世界保健機関)は、世界の認知症患者は3560万人で、2030年には2倍、2050年には1億人を超えると発表した。厚労省は日本の介護が必要な認知症患者は、2030年に250万人になると推測している。

認知症は画像診断の急速な発展で、発症直前の早期の段階でわかるようになってきた。アルツハイマー型が半数以上を占め、次いで"レビー小体型"が多く、脳梗塞など脳血管性認知症は3番目になっている。

 

アルツハイマー病はアミロイド沈着したからといって、すぐに発症するわけではない。発症する数10年前から、アミロイド沈着をしている。アルツハイマー病変があるのに発症していない人は、言語能力など認知能力に優れているという報告がある。

老後も働いたり、自治会活動・ボランティア活動をしている人と、家にじっとしている人とでは、明らかに違っている。

 

言葉を発することは、運動野・記憶野・聴覚野など脳のいたるところを活性化させる。認知症になるのを遅らせるためには、老後も積極的に社会と関わりを持ち、意識して外出することを奨める。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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