ハンバーガーセットと肥満の医学

2011年9月29日

   2011923日午後415分から、日本肥満学会の教育講演「肥満の食事療法」を淡路夢舞台国際会議場のレセプションホールで行った。教育講演の会場は、立見が出るほど盛況だった。

「米国をはじめ世界中で肥満が増えたのは、高脂肪・高ショ糖のファーストフードが大きな要因だというのが世界の肥満疫学者のほぼ一致した見解だ」と講演した。

 

「肥満になる生活として、『何を食べると肥満になりやすいか?』この問いに対して『ハンバーガーセット』と答えることができます」という成宮学先生の言葉(「肥満の医学」日本評論社:池田義雄編2011)を言引用した。

店員「いらっしゃいませ。今日は。御注文をどうぞ」

客「ハンバーガー1つ」

店員「ハンバーガーといっしょに、フライドポテトはいかがですか」

客「ではそれも1つ」

店員「ごいっしょに清涼飲料水などいかがですか。セットになり、お安くなっています」

客「ではオレンジジュースを1つ」

ハンバーガーショップで一生懸命働いている従業員の姿が、よく描かれている。

ハンバーガーは高カロリーの脂肪分の多い肉が使われており、柔らかくて噛む必要が少ない。フライドポテトは高カロリーで、一口サイズで食べやすい。飲料は砂糖などで糖分が多くなる。

 

会場には池田義雄元慈恵医大教授も来ておられ、「東京に帰ったら、成宮先生に伝えておきますよ」と言われた。後輩の糖尿病専門医は「私も糖尿病の栄養指導の時、ハンバーガーセットのことを言っていますよ」と言う。

講演後、会場の外に出ると管理栄養士の人が待っておられ、「脂を多く含む肉は口に含んだだけで溶け、噛む必要が少なくなります。高カロリーで噛む回数の少ないハンバーガーで、日本の若者に肥満が増加しているのではないかと私も思います」と言われた。

ファーストフードでは1回の平均食事時間が827秒、咀嚼回数が562回と、ごはん食の食事時間1328秒、咀嚼回数1019回に比べ半分程度になっているという報告もある。

 

清涼飲料水業界は健康のため、ダイエット飲料の低カロリー路線に方向転換しているが、ファーストフード業界は、高カロリーのメガ路線を走りつづけている。

何故なのだろうか?消費者の味覚が変化したのか?高カロリーの脂を好むのは、飢餓の時代を長く生きてきた人間の本能なのか?医学的・社会的にファーストフード問題を解決することは、世界の肥満学者に課せられた責務だと思った。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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