肥満高血圧・肝硬変と14面体の謎

2011年9月26日

    2011922日、第32回日本肥満学会が開催される兵庫県淡路市夢舞台に向かった。台風15号も去り、快晴で陽射しが眩しい。

 

午後5時、明石海峡大橋から眺める瀬戸内海は絶景で、一昨日までの豪雨がうそのようだ。会場のあるウエスティンホテル淡路623号室に宿泊した。ベランダから眺める大阪湾の景色が素晴らしい。浴室は引き戸になっており、バリアフリーで広い。シャワーは浴槽外でも浴びることができ、椅子も置いてある。浴室各所に手すりがあり、高齢で体が不自由になった人でも宿泊できるようになっていた。

 

午後7時からウエスティンホテル1階の「チェーロ」で会長招宴があった。淡路島の海の幸、山の幸をふんだんに使ったフランス料理フルコースだった。

杉原甫国際福祉大学病理学教授と肥満者の脂肪細胞の話をした。杉原先生は形態学の世界的権威で、杉原先生が撮影された脂肪細胞の走査電顕写真を、講演会で何度も使わせてもらっている。

 

杉原先生は「ツイッタ―で先生が"肥大した脂肪細胞は14面体だとつぶやきながら歩いた"と書かれているのを読み、私より先に脂肪細胞が14面体だと気付いた人がいたと知った。講演会ではいつも、徳永先生が歩きながらツイッタ―でつぶやいていたという話をするんですよ」と言われた。4年前のメタボ教室:第96段"14面体の謎とメタボリックシンドローム"を読まれたようだ。

私は大学時代、肥満者の脂肪細胞の直径を1100個づつ測定していた。約1万個の肥大した脂肪細胞を顕微鏡で測定したが、球形の脂肪細胞は少なく、大部分は多面体の脂肪細胞だった。ザクロや石鹸の泡など自然界に14面体が多いことを知り、ブログで脂肪細胞も14面体ではないかと書いたのだ。

 

肥大した脂肪細胞は、上下の四角形に4個づつ五角形がつき、その2つをつなぐような形で中間に6角形が4個入る。14面体は2個の四角形、8個の五角形、4個の六角形から成り立っているという。

杉原先生はさらに「肝硬変結節も14面体になっている。肝硬変では14面体の結節に門脈が圧迫され、門脈圧が亢進することがわかっている。肥満者の高血圧も、肥大した14面体の脂肪細胞に血管が圧迫されて、血圧が高くなっていると考えられる。真理は意外と単純な所にあるものかもしれませんね」と言われた。

 

シャンパン・ビールから白ワイン・赤ワインとほろ酔い気分になった。ここは安藤忠雄が設計した淡路夢舞台、肥満研究者仲間と病態解明につながる飛躍した"夢"のある論議ができ、あっという間に幸せな時が過ぎていった。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
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