看護師不足とワークライフバランス

2011年2月26日

201121819日、福岡で開催された「第45回糖尿病学の進歩」では、看護師不足が話題となった。 

大都市の公立病院に勤務する友人に「日本看護協会は51看護、夜勤64時間にしようとしている。71看護から51看護に変わると、看護師不足になるのではないか」と聞かれた。「中小の病院や、地方の病院は看護師不足で大変になるだろうが、大都市の大病院は大丈夫だ」と答えた。

私立病院に勤務する糖尿病専門医は「看護協会の考えもわかる。年配の先生方は医師や看護師は聖職だと考え、過重労働も当然だと思っている。今の若い医師は仕事もプライベートも大切にするというワークライフバランスの考え方になってきている。病院勤務医は当直明けでも外来・検査で36時間労働を強いられ、労働基準法に違反して働いている」と言う。

 

日本看護協会の久常節子会長は20101117日、細川律夫厚生労働大臣に対し「夜間交代制勤務に従事する看護職の労働時間に係る最低基準の策定」の要望書を提出し、1130日厚労省内にプロジェクトチームが立ちあげられている。

病院看護師は200681.9万人で、年間離職者数は10.2万人(離職率12.4%)となっている。看護師の離職率が高いのは、夜勤など過重労働が原因とされている。先月、京都日赤病院に入院して手術を受けた友人は「夜中も働いている看護師さんが天使に見えた」と言う。

 

日本精神科病院協会の山崎學会長は2月の協会誌巻頭言で「看護師の勤務時間は、県や厚生局の立ち入り検査で厳密に検査されている。一方で、医師の過重労働は国の医師抑制政策で頂点に達している。71看護が導入された時、民間病院から大量の看護師が国公立病院に引き抜かれて行った」と述べられている。

厚労省OBに「医師不足なのに、国は何故医師抑制政策を取りつづけたのか」と聞くと「医療行政を行うには医師会の協力が不可欠となる。医師数が増えて医療費が増加することを懸念した厚労省と、医師過剰になることを怖れた日本医師会との思惑が一致していた」と答えられた。将来予測は難しい。日本歯科医師会は歯科大学を増やし過ぎ、歯科医師は過剰になっている。

 

51看護、夜勤64時間に対しては賛否両論がある。病院経営者や年配医師は反対するが、子供を持つ女医さんやワークライフバランスの考え方をする若手医師は理解を示す。

看護師不足になって最も被害を受けるのは、大都市圏・県庁所在地以外の地方の患者さんや看護師さん達だ。政策を立案する時、東京だけでなく地方のことも考える必要があるだろう。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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