大阪大学循環器内科同窓会とメタボリックシンドローム

2009年6月24日

    2009620日、大阪リーガロイヤルホテル山楽の間で、大阪大学循環器内科同窓会が開催された。

大阪大学循環器内科同窓会は、大阪大学がナンバー内科から臓器別内科になったことより、第1、第2、第3、第4内科の循環器研究室が合体してできたものだ。

 

この辺かなと思い、5列目中央に座った。最前列の中央右に旧第1内科の阿部裕先生が座られた。阿部裕先生は私が大阪市役所診療所長をしていた時、わざわざ大阪市役所まで挨拶に来られたことがある。3列目中央左に旧第3内科で同級生の淡田修久君が座った。淡田君は、私と同じ日本循環器学会正会員代表をしている。

2列目、4列目には誰も座らず、私の前方には4人しか座っていない。出席者が少ないなと思い後ろを振り返ると、7列目以降170人の中堅勤務医師でぎっしり埋まっていた。いつの間にか、私も年をとったものだ。

 

同窓会に出席していた人に「健診・保健指導ではメタボリックシンドロームという難しい外来語を使っている。何故、日本語を使わないのか」と聞かれた。「メタボリックシンドロームはメディア用語で、公式には内臓脂肪症候群という。メディアが、日本内科学会など8学会が合同で決めたメタボリックシンドロームを使っているだけだ」と答えた。

 

私は「自画自賛だ」と言われ、へこたれながらも「内臓脂肪症候群がいい」と言い続けてきた。厚生労働省は"カタカナ用語はごまかしのきく言葉だ"という明確な理由から、行政用語として"内臓脂肪症候群"を採用している。カッコ付きで、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)としているのは、そのためだ。

 

メタボリックシンドローム診断基準検討委員会では、名称について激しい議論があったようだ。自称、気が弱いといわれるある教授は「間(あいだ)をとって、メタボリック症候群としてはどうかと提案したが、直ちに却下された」と言われていた。

 

カタカナ用語は実に便利な言葉だ。みんなの顔を立て、日本人にあっている。動脈硬化症候群、代謝症候群、インスリン抵抗性症候群、内臓脂肪症候群、いづれにしても意味明確な日本語にすると、誰かが反対するだろう。曖昧なカタカナ用語だったからこそ、8学会の各委員が合意したのだろう。

内臓脂肪症候群が国の公式用語だとわかっている人だったら"やせで危険因子を複数持つ人を特定保健指導の対象にしよう"などという意見は出さないだろう。

 

カタカナ用語のおかげで、学会・メディアが一つにまとまり、ここまで国民に広まった。私も今では、メタボリックシンドロームの名称でよかったと思っている。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

著作権について