女性の星と医師不足

2009年6月21日

    2009620日、大阪市北区中之島にあるリーガロイヤルホテル山楽の間で平成21年度大阪大学循環器内科同窓会(小室一成会長)が開催された。

 

天井が6角形と3角形でなる山楽の間は、1ヶ月前に日本糖尿病学会評議員会でも使用された。私は糖尿病専門医と循環器専門医を持っている数少ない医師だった。今は日本循環器学会正会員代表をしている。循環器内科同窓会には会員559名中、183名が出席した。

 

特別講演は国立病院機構矢崎義雄理事長の「循環器病学の進歩と今後の展望」だった。講演の後半は医師不足問題を取り上げられた。矢崎先生は中央教育審議会など多くの行政の委員をされ、20094月からは安心社会実現会議の委員で医師不足問題などを審議されている。

「日本の医師数は人口1000人当たり2.1人で、OECD諸国平均の3.0人に比べ少ない。日本の医師数を1.5倍にせよとの議論があるが、3.0人は医師過剰のイタリアやギリシャを含めた数字で、米国は2.4人となっている。日本の人口が今後減少することを考えると、1.5倍は多すぎる。

 

メディカルスクールを新設するという考えもあるが、一旦できたものを無くすことは難しい。大学の定員増なら修正可能で、医師過剰となった時も対応できる。医学部定員を698人増加させ、8486人までする。20094月に決まった臨床研修制度の見直しは2010年から開始する。医師がやっていたことを、一部看護職や事務職の人にやってもらう。

消費税はすぐには上がらず、財源確保が難しい。社会保障費2200億円撤回となった場合、一律に増やしても意味はない。産科、救急医師への手当など病院、勤務医に重点的に充てる」と話された。

 

懇親会の立食パーティーでは、全国ニュースとなった大阪府下の市立病院院長以下集団辞職に話題が集中した。院長は私と仲のいい同級生で、全国初の女性市立病院院長としてメディアにも取り上げられ「女性医師の星」と呼ばれていた。山口県の田舎の公立高校から現役で大阪大学医学部に入学し、芯の強い女性だった。

 

医療を知らない市長による暴挙だと単純に考えていたが、根底に深刻な勤務医不足の問題がある。多くの市立病院を守るためには、どこかの市立病院が犠牲になる。

 

「有能で頑張り屋で、何の落ち度もない"女性医師の星"が辞任に追い込まれる。このまま勤務医が減少し続けると、大和川や猪名川の向こうにある市立病院から大阪大学がいつ撤退してもおかしくない。厚労族やメディアに訴え、勤務医不足対策を急がなくてはならない」と私は考える。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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