噛むことと肥満・糖尿病

2009年5月25日

    2009523日大阪市北区中之島にあるホテルNCBで、吉松博信大分大学第1内科教授による日本糖尿病学会教育講演3「食欲調節と肥満」があった。

 

吉松先生は坂田利家前大分大学教授と食欲、特にヒスタミンの食欲に及ぼす影響を研究されていた。脳内ヒスタミンが増加すると食欲を低下させ、内臓脂肪を減少させるという。

ヒスタミン受容体拮抗薬であるヒスタリンhistaleanが、海外で抗肥満薬として開発されているそうだ(Int J Obes 2008)。ヒスタリンはhistamineとやせの意味のleanを合わせた言葉で、覚えやすくネーミングがいい。

よく噛むことでも、脳内ヒスタミンを上昇させることができるという。肥満者を対象にした検討で、30回噛むことにより食事量が減って体重が減少したと話された。

 

大阪国際会議場のポスター会場に行く途中、大阪大学の後輩に出会った。演題をたくさん出し、走り回っている。後輩も頑張っている。私が大阪大学の研究室のチーフをしていた頃、メインの学会には20題の演題を出すことが至上命令だった。チーフをしていた頃を思い出し、他大学が何題出しているか気になった。

 

20題をクリアしているのは東京大学糖尿病・代謝内科48題、滋賀医科大学内分泌代謝内科36題、大阪大学内分泌・代謝内科26題、東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科25題、京都大学糖尿病・栄養内科23題、順天堂大学糖尿病・内分泌・代謝内科23題、九州大学病態制御内科22題、富山医科大学第1内科20題、の8つの教室があった。

 

順天堂大学の河盛隆造教授は大阪大学の先輩で、大阪大学が大阪市福島区堂島にあった頃、壁を隔てて18年半隣の研究室におられた。研究棟8階の廊下を突き当たり、右のドアを開けると私達の研究室、左のドアを開けると河盛先生の研究室だった。私達の研究室で飼っていた猿が、河盛先生の研究室の女性を噛んだことがある。

 

研究室のアクティビティは量×質になる。演題数の多いことは、伸び盛りの若手研究者の教育・研究に役立つ。卒後515年が、最も研究に脂がのる時期で、いつの間にか雲の上に出ていることがある。

 チーフは大変だ。各演題の結果をよく噛み砕いて結論を出さなくてはならない。20題の研究室予行を行うのに、夕方から12時過ぎるまで連続5日間かかったこともある。研究室員は代わる代わる親子丼や全部うどん(天ぷら、肉、玉子、きつね入りうどん)を食べに行くが、チーフは席を離れることはできない。耐え難い空腹感だった。

 

肥満・糖尿病予防には、歯を丈夫に保ち、よく噛んで過食にならないようにすることだ。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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