インスリン抵抗性とメタボリックシンドローム

2009年5月10日

    200952124日、大阪国際会議場で第52回日本糖尿病学会(柏木厚典会長)が開催される。

 

柏木先生は大阪大学の先輩で、滋賀医科大学付属病院長をされている。柏木先生は1998922日から始まった厚生労働省の班会議(松澤班)「糖尿病発症高危険群におけるインスリン抵抗性とその生活習慣基盤に関する多施設共同追跡調査―介入対象としての内臓肥満の意義の確立」でインスリン抵抗性基準値設定を担当されていた。

 

インスリン抵抗性の指標としてHOMAIR (空腹時血糖値×空腹時インスリン濃度÷405)を用いられていた。4365名の検討で、HOMAIR1.6以上のインスリン抵抗性がある群では肥満・脂質異常症・高血圧が多いこと、動脈硬化危険因子数の増加とHOMAIRが関連することを示された。

 

最近、日本糖尿病学会に限らず、学会で質問する人が少なくなった。一般演題で座長をしていると、以前は質問が多くて時間が遅れることを気にしていたが、最近は時間が余って座長がコメントし時間を調整することも多くなった。

 

1978年大阪大学に帰局した時、先輩に「馬鹿になれ。研究はがむしゃらにやれ」と言われた。「学会は勉強に行く所ではなく、顔を売りに行く所だ。勉強は論文を読めばいい。発表がない時は、最低3題質問するように」と言われ、なかば強制的に質問させられていた。

どの演題に質問をするか、新幹線の中や宿泊先のホテルで考えていた。今振り返ると、質問を義務付けられたことは、ひっ込み思案だった私にとって役に立ったと思う。

 

59日、月に1度ある土曜日の仕事を終え、久しぶりに吹田市江坂から高槻市富田の"あじとみ"に行った。昼食後、店を出るとすぐ緑の匂いがした。白い花や黄色い花が咲いており、高槻には自然が多く残っている。JR京都線沿いを歩いた。快速、普通電車が次々とすれ違っていく。特急列車や長い貨物列車が通り過ぎていく。

 

空を見上げると雲一つない晴天で、陽が眩しい。昼の散歩ができなくなって、この半年で5kg体重が増えてしまった。体重が増加すると膝に負担がかかる。膝を傷めると歩数が減少し、ますます体重が増えていく。仕事を持つ男性が、昼食時間20分でも緑の中を散歩できる職場環境にすれば、ストレス解消や生活習慣病対策にもなるのに!

 

「日本は欧州のように成熟した社会となり、がむしゃらに働く時代は過ぎた。アフターファイブや休日は、豊かな人生を送るため使えばよい。歩行や運動で内臓脂肪を減少させ、インスリン抵抗性を改善させて、メタボリックシンドロームを防げばいい」と私は思った。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

著作権について