南アジアの肥満と2型糖尿病

2009年1月19日

    2009258日、インドのムンバイで第5回アジア・オセアニア肥満学会が開催される。

日本肥満学会からは松澤佑次理事長、吉松博信国際委員会委員長らの出席が予定されている。インドでも肥満に対する関心は高く、松澤先生は4年前「アディポネクチンの発見」で、インドで最も権威のある賞を受賞されている。アディポネクチンは脂肪組織から分泌される物質で、抗動脈硬化作用とともに抗糖尿病作用を有している。

 

1月7日、インド国営の航空会社エア・インディアは「極めて太りすぎ」を理由に、10人の女性客室乗務員を解雇したことを明らかにした。

 

18日、インド・ムンバイ在住の人と肥満の話をした。「インドで肥満は"富"と"美形"の象徴だったが、インド人は油っこい食べ物が好きで車に乗ることが多く、肥満が増加し社会問題となっている。ベジタリアンは肉や魚を食べないが、食用油をたっぷり使った料理を食べるので、カロリーが多くなっている。野菜の天ぷらも衣に油がたっぷりある。

富裕層の女性は1ヶ月1万円でメイドを雇っているので、動くことがなく完全な運動不足になっている。富裕層の子供は太っているが、貧困層の子供はやせている。富裕層だけでなく、中間層でも肥満は増えてきている。心筋梗塞や糖尿病が増加し、健康志向となり減量ジムなどが流行っている」 

「ムンバイの物価は高く、ニューヨークや東京より高くなっている。アパートは1ヶ月70100万円で、サービス・アパートは月150万円もする。住居費だけで年1000万円かかる。20081126日にインド・ムンバイ同時多発テロ事件があったタージ・マハル・ホテルは15万円と高い」と言う。そのうちムンバイのバブルは、はじけそうだ。

 

IDF(国際糖尿病連盟)は「世界の糖尿病は2003年の19400万人から2025年には62%増の33300万人に増加する。また、南アジア地域の糖尿病の増加率は最も高く3930万人から108%増の8160万人になる。

東アジア・オセアニア地域は4300万人から76%増の7580万人へ、欧州は4840万人から20%増の5860万人へ、アラブ地域は1920万人から105%増の3940万人へ、アフリカ地域は710万人から111%増の1500万人へ、北米は2300万人から57%増の3620万人へ、南米は1420万人から85%増の2620万人へ増加する」と予測している。

 

インドを含む南アジアは、2025年には東アジア、欧州を抜き、世界一の糖尿病地域になると予測され、肥満対策が必要だ。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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