診療科格差社会と産科医療の崩壊

2008年8月31日

    2008829日、福島県立大野病院事件で地検が控訴を断念し、産科医師の無罪が確定した。

 

産科で医療訴訟が増加し、産科医師が逮捕されたことは産科医療崩壊の大きな要因となった。産婦人科医師数減少の要因として、拘束時間が長いことなども指摘されている。

 

外食すると隣の席の話声が聞こえ、世間の人が何を考えているかわかる。「メタボ」とか「医者」という言葉が出てくると、耳がアンテナになる。「医者は儲かる。医院で支払うのは3割だ。支払った3倍以上の収入がある。1日100万円は儲かる」などと話している。

医者は一律に大金持ちだと思っている人達がいる。1日に100万円売り上げのある医院は一握りだ。医師の3分の2を占める勤務医の収入は低く、開業医の収入も診療科によって大きく異なる。

 

勤務医の収入は、どの科でも同じだが、病院を離れ開業すると大きな格差ができる。医師不足が言われている診療科の収入は少ない。ある地域で開業した場合、婦人科の診療報酬は平均の4分の1、小児科は平均の2分の1と少ないらしい。

高齢者の多いある科の診療報酬は平均の2倍と多く、婦人科とその科では格差が8倍に達する。医は仁術とされるが、これでは産婦人科や小児科を目指す学生は少なくなるだろう。

 

診療報酬点数の決定には、日本医師会や国会議員の影響力が大きい。医師会の理事をしている友人に、どうして産科、小児科の収入が少ないのか聞いてみた。「医師会の理事に産科や小児科の意見を代弁する人が少ない」と友人は言う。ある県の職員は「いくつかの産科病院が、老人病院に変わった」と嘆く。

産婦人科医は開業しても収入が少なく、生活していけない可能性がある。産婦人科の診療報酬を上げると、どっと開業する産婦人科医が増え、産科医不足となって深刻になるかもしれない。まず、病院の産科の診療報酬を上げ、産科医を目指す学生が増えてから婦人科の診療報酬を上げるとよいだろう。

 

医療費全体を増やすことも必要だが、財務省の財布の紐は堅い。医療費のパイは決まっている。産科・小児科の診療報酬を上げると、他科の診療報酬は下がり反対が出てくる。多い診療科の診療報酬を減少させ、格差を数倍以内におさめる方法も戦略としてある。

 

孫子曰く「上に雨ふりて水沫至らば、渡らんと欲する者はその定まるを待て」と。診療科間格差の確かなデータを集めた上で、兆しを察知して対策をたてる必要があると考える。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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