特定健診保健制度と配偶者の役割

2008年7月15日

    2008年4月から全国の4074歳の男女に対し、特定健診保健制度が開始された。

 

今回からの健診には、被扶養者も入っている。被扶養者はどの医療機関で受診すればよいのか戸惑っているようだが、大部分の病院、健康管理センターと約半数の診療所で特定健診を受けることができる。

被扶養者の多くは女性である。特定健診保健制度の帰結であるメタボリックシンドロームの女性の発症は男性の10分の1しかない。費用対効果は10分の1となる。糖尿病発症も女性は男性の2分の1で、費用対効果は2分の1となる。

 

特定健診保健制度の主なターゲットは中高年男性にある。それでも女性に対し特定健診保健指導を行う意味の一つには、女性が家庭の食生活を担っていることにあると私は思う。配偶者である中高年女性には栄養、運動の知識を十分身につけ、夫の栄養管理、生活管理を行ってもらいたい。

20071月、支払い側の保険者の方々に「メタボリックシンドロームと特定健診保健指導」の講演を行った。立食パーティーで「国はわしらの財布を握り、今度は体の中まで握ろうとするのか」と言われたことがある。これからは配偶者に財布を握られるとともに、体の健康まで握られることとなるのかもしれない。

 

日本の学会では本人だけ参加するが、国際学会では夫人同伴で来られる事が多い。国際学会では配偶者の役割は大きい。国際肥満学会が神戸国際会議場で開催された時は、奥様方の接待をするため急きょ婦人部隊が結成された。

神戸市長招宴やその後の2次会などで、私と妻は恩師の南カリフォルニア大学ブレイ教授夫妻、7人目の国際学会最高賞を受賞されたスウェーデンのシェーストレーム教授夫妻、北米肥満学会会長のバーバラハンセン女史らのお相手をした。

 

4月に三宮に来て、昼食は50軒以上巡った。三宮の街はフラワーロードを境として別世界となる。東側ではフランス料理、スパゲティ、ミニ会席料理など中年のご婦人方が多い。西側ではベトナム料理、ラーメン、魚煮付け料理など中高年男性が多い。

フラワーロードの東側での昼食代は平均1000円と、西側の平均650円の1.5倍と高かった。東側では最初から量が多い。西側の定食屋では量は普通で、壁に「おかわりできます」と書いてあり、足りない人は気軽にお代わりができる。残すのはもったいない。

 

肥満児の両親を調査すると、父親より母親が肥満であることが多い。これは子どもの食事を母親が作っていることと関連すると考えられる。メタボリックシンドローム対策における、妻の役割は大きい。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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