短時間正社員制度と医師不足

2008年5月14日

   2008534日、息子を連れて中国縦貫道を行きは4時間、帰りは6時間半かけて広島県庄原市へ父の墓参りに行った。

 

20071231日、紅白歌合戦で聴いたすぎもとまさとの「吾亦紅(われもこう)」に共感した。「・・仕事に名を借りた ご無沙汰 あなたに あなたに 謝りたくて・・」。日直などで土日つづけて休めず、休暇を取るのも難しくて、病院勤務医時代なかなか広島の実家に帰省することができなかった。

 

暑くもなく寒くもない季節で、父が亡くなって7年、初めて墓の周囲に生えてきた草を取って掃除をした。墓の後ろに紅色の椿の花がポトリと落ちていた。木にはまだ紅色の花が少し残っており、これまで椿の木が立ってあることにも気づかなかった。

 

「先祖を大切にしていると、子孫を守ってくれるんだね」息子の不意の言葉に戸惑った。息子を連れてきた甲斐があった。親が祖先を大切にすることで、子供も祖先を大切にする気持ちを持ったのだろう。

 

2008321日厚生労働省は各都道府県知事宛に「病院勤務医の労働環境改善の推進について」の通知を出した。病院勤務医の負担軽減のため、短時間正社員制度に関する助成など支援策が載っている。

 

短時間正社員とは、所定労働時間が短く残業が基本的にない正社員を言う。育児などライフスタイルが多様化した社会において、少しでも女性医師など働きやすいようにして、医師不足を解消しようというものである。

 

メリットとして「医師が育児・介護、自己啓発、社会活動をしながら働き続けることが可能になり、優秀な有能な人材の職場への定着や人材確保を容易にし、医療機関の体制が安定化する」としている。

 

こういう考え方を持っている人がいるのは嬉しい。日本人は働き過ぎだ。長時間労働、多報酬を望む医師ばかりではない。多様な価値観を持って生きようとしている医師もいる。

 

短時間正規雇用医師はパート医師と異なり、正規医師と同じように退職金、昇進、育児休業、社会保険があり契約期間も無期となっている。就業時間に対応した待遇が得られ、育児で病院を辞めざるを得なかった女性医師に朗報だ。

 

短時間正規雇用医師制度は短期的な対策で、根本的な医師不足対策ではないが、ライフステージに応じた多様な働き方の実現に役立つかもしれない。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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