病院依存社会とメタボリックシンドローム

2008年2月29日
 2008年2月22日、朝刊一面トップに「大阪府公立病院8地域に再編、医療集約、役割を分担」の橋下徹大阪府知事による案が載った。

 大阪府下にある各自治体病院は、メタボリックシンドロームの治療・予防の中核を担っているが、公立病院の赤字は行政の大きな負担となっている。

 2007年10月初旬、大阪市中央区で大阪府の財政について話をした。「大阪府の財政は危機的状況にある。数年で財政破綻し、夕張市のようになる可能性がある。大阪府の財政悪化の要因は大企業からの収入が減ったことと、府下各市への補助金が多くなったためだ」という。

 法人二税収入は1993年の8351億円から、2005年には4837億円と長期不況の影響を受け落ち込んでいる。逆に、歳出は1993年の2兆1248億円から2005年には2兆9322億円に増加している。

 財源が増えないと各市への補助金が減らされることとなる。歳出を減らすには、医療・社会保障費の削減、教育費の削減、府職員の削減・給与カットなどが考えられる。

 大阪府の老人1人当たりの医療費は全国で4番目に多い。長野県の1.46倍になっている。長野県は自宅で亡くなる方が多い。大阪府の1人当たりの医療費を長野県と同じにすると、医療費を3割削減できる。

 しかし、大阪府民は今の手厚い病院での医療サービスを、いつまでも受けつづけることができると思っている。病院での医療の恩恵を受けてきた大阪府民は、自宅で家族の面倒を見ることには耐えられないだろう。

 泉州地区には6つの病院(和泉市立病院、泉大津市立病院、市立岸和田市民病院、市立貝塚病院、市立泉佐野病院、阪南市立病院)がある。勤務する若手医師に聞くと、「経営破綻して、早く自治体病院でなくなった方が楽になる」と言う。自治体病院の医師の激務はつづいている。

 大阪府の財政破綻を防ぐには京都府、滋賀県などを大阪と同じ行政区域にする道州制を実行する時期に来ているのかもしれない。他に、「大阪府と大阪市が合併して、東京都のように大阪都になる」という方法もある。

 自治体病院経営は、経済という大きな波に翻弄されている。「子供が親の面倒をみない府民には、それなりの負担をおってもらうとよい」と私は思う。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

著作権について