内科医不足とメタボリックシンドローム

2008年2月21日
 2008年2月7日、大阪での「メタボリックシンドロームに克つ」の講演の前、主催者の人と喫茶店で紅茶を飲みながら話をした。

 「医師不足と言われているが、日本の医師数は年々増加している。本当のところ、日本の医師数は多いのか、少ないのか」と聞かれた。

 「産科、小児科の他、都市部では内科の勤務医も不足している。都市部の開業医は多い所があり、医師の偏在もある。より問題なのは、日本の医師数が1000人当たり2.0人で、OECD30カ国中27位と少なく、韓国にも抜かれようとしている」と答えた。

 2008年1月27日の朝刊一面トップに「医師不足、大阪・兵庫では内科医も手薄」の記事が載っていた。メタボリックシンドローム対策を担うのは内科医だ。

 医師不足問題について都道府県別・診療科別に18の医師会で調査し、深刻度の高い順に5つの診療科が載っている。医師不足で深刻なのは1位産科、2位小児科をあげた医師会が大半だった。しかし、大阪府と兵庫県では1位内科、2位外科、3位産科の順に不足感が強くなっている。

 新聞一面で同級生の大阪府医師会副会長は「内科でも消化器内科、循環器内科など多くの科があるが、内科一般を診る医師が少なくなった。専門化が進むと医師が分散され、全体としては手薄になる」と述べ、同級生の前日本医師会理事は「産科、小児科だけでなく生死にかかわる内臓関係の科目は敬遠され、過重労働は深刻な問題となっている」と述べている。

 30年来の友人である関東地方の大学病院内科教授は「医師は絞れば絞るほど水の出てくる濡れ雑巾のように思われている。もう絞っても出る水はない」と憤慨する。東京の親しい大学病院内科教授は「内科医局員が減少し、1年365日呼び出されれば、いつでも病院に出勤する体制になった。教授という名の研修医だ」と嘆く。

 政治家、官僚、国民の右の耳には「医師の偏在が問題だ」と入り、左の耳には「医師の絶対数の不足、偏在の両方が問題だ」と入る。どちらを信じてよいのか迷っている。

 高槻健管センター前の花壇にクロッカスの黄色い花が咲いてきた。医師を育てるには時間がかかる。「おそくなってごめんね」では、もう遅い。

 「高度医療化、高齢化社会で内科医不足は加速している。日本の医療全体を見渡せる人が強力なリーダーシップを取って、マスコミ報道で世論を味方にするとよい」と私は思考する。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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