痛風・高尿酸血症と医学将来予測

2008年2月14日
 2008年2月7日、大阪弥生会館で「メタボリックシンドロームに克つ」の講演をした。

 「痛風で尿酸を下げる薬を飲んでいるが、尿酸値が下がらない」と質問があった。尿酸を下げる薬は大きく分けて腎臓から尿酸を排泄する薬と、尿酸合成を抑える薬と2種類ある。両者を併用してもよい。

 高尿酸血症はメタボリックシンドロームと密接に関連している。高乳酸血症の食事療法は1に減量、2にアルコール制限(特にビール)、3にプリン体摂取制限である。

 1983年(昭和58年)2月5日東京千代田区の喫茶店で、ある人と医学の将来予測をした。「昭和60年(1985年)には高脂血症がピークになる。昭和70年(1995年)には肥満が、昭和80年(2005年)には痛風・高尿酸血症がピークになる」と予測された。

 1985年(昭和60年)家族性高コレステロール血症の研究で、米国テキサス大のゴールドスタインとブラウン教授がノーベル賞を受賞した。1994年食欲を抑えるレプチンが、1997年アディポネクチンが発見された。

 2006年、血中尿酸値の測定が特定健診の必須項目に入った。1983年にした将来予測はピタリと当たったと思った。しかし、2007年4月、尿酸測定は必須項目からはずされた。痛風・高尿酸血症の人は予想したほど増加しなかった。

 想定外だったのは糖尿病が30年間で30倍に増えたことである。日本人の膵臓β細胞は予想以上に弱かった。糖尿病患者さんが30倍に増えれば、医療スタッフも30倍必要になる。医療費も30倍になる。2008年4月から開始される特定健診・保健指導は、糖尿病とその合併症による医療費を抑制する目的も大きい。

 将来予測は難しい。1980年代後半これからダイエット食品の時代が来ると、数社の人達とダイエット食品の開発をした。しかし、売り上げが伸びず、熱心に開発された人達は気の毒だった。時代が早すぎたのだ。

 10年後、ほぼ同じ成分のダイエット食品を売り出した会社は、年商50億円から100億円、200億円、400億円と年々、倍々ゲームで年商600億円までになった。商売は早すぎても遅すぎてもいけない。何事もタイミングが重要である。

 10年後、20年後の長期予測をしても、ほとんど儲けにはつながらない。1年、2年後、もっと短い1日、1時間前を予測する人の方がはるかに儲けることが出来る。

 長期予測は重要だが、当たっても評価されないのが現実の社会だ。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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