内臓脂肪型肥満ネーミングとメタボリックシンドローム

2007年12月27日
 メタボリックシンドロームの基本となる「内臓脂肪型肥満」という言葉は松澤佑次先生が創られたものだ。

 英語名をVisceral Fat Obesityとされた。フランスでは男性型肥満、スウェーデンでは腹部型肥満、中心型肥満、米国では上半身肥満と呼ばれている。Visceral Fat Obesityが海外で略され、Visceral Obesityとなり、逆輸入されて内臓肥満とも呼ばれている。

 私は「肥満研究」「糖尿病」などの学会雑誌論文や学会抄録、研究助成金の査読(審査)を400編以上行ってきた。1990年代、日本の雑誌投稿で内臓肥満となっているものがあった。内臓肥満を使用している著者は「自らは汗をかかず、外国の英文を翻訳する学者だ」と考え、内臓脂肪型肥満に書き換えるよう指示した。

 2000年代になると、マスコミなどを中心として略して内臓肥満も使われるようになった。私もメタボリックシンドロームは長いので、メタボリックやメタボと略して使用している。現在内臓肥満も許容しているが、私はオリジナルを尊重し内臓脂肪型肥満を用いている。

 論文査読をしていると、冗長な文章の論文が増えてきた。接続詞と代名詞で長い文章をつづけるため、読みづらいものがある。最近、漢文の教育がおろそかになり、簡潔な文章を書けなくなってきたのではないだろうか。

 1990年代、論文のウエスト/ヒップ比に腰囲を用いているものが多かった。ある著者はウエストを腰囲とし、別の著者はヒップを腰囲としている。腰囲は紛らわしいので、腹囲と臀囲を用いるよう指導した。

 「阪神メタボリズム研究会」などに、東京大学第3内科の門脇孝先生を2度お呼びしたことがある。内臓脂肪型肥満が最初に掲載されたのが1987年の「メタボリズム」という雑誌だったので、阪神メタボリズム研究会と命名した。

 当時、助手だった門脇孝先生は恐縮され「内臓脂肪型肥満の概念を提唱された先生方の1人を前にして講演し、試験を受けているようで緊張しました」と言われた。律儀な先生で、丁寧な礼状と年賀状まで頂いた。今では東京大学糖尿病・代謝内科教授として、日本の糖尿病学会を背負うまでになられている。

 暮れも押しつまってきた。来年は内臓脂肪型肥満の詳細なメカニズムの解明や新しい治療法の開発が期待される。究極vs至高の対決のように、東の門脇孝教授vs西の下村伊一郎教授の東西対決が見ものだ。

 競争は研究の原動力だ。負けて力を得、勝って自信を得る。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

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