最小友愛数220とコレステロール基準値

2007年12月13日
 友愛数とは2つの自然数のそれ自体を除いた約数の和が、互いに他方と等しくなる数で、最小友愛数は220である。私たちの研究室が提唱した総コレステロール基準値220mg/dlは友愛数で、標準体重BMI22.0も少数点を除けば友愛数となる。

 2007年12月9日、台湾の高雄スプレンダーホテルのすぐ近くにある本屋に行った。本屋の棚には中国語に翻訳した川端康成の「伊豆的舞娘」、小川洋子の「博士熱愛的算式」、浅田次郎の「椿山課長的那七天」などがあった。

 「椿山課長の七日間」は、私の患者さんからカセットテープ5本に吹き込んだものをもらい、眠る前に目を閉じてベッドの上で聞いていた。患者さんは糖尿病性網膜症などで失明した人達のために、ボランティアで小説を自らの声で吹き込んでいた。

 12月10日、台湾新幹線左営(高雄)駅の売店には村上春樹、村上龍、小川洋子の3人の日本人作家の本が置いてあった。村上春樹は兵庫県芦屋市の中学を卒業し、小川洋子は芦屋市に住んでいる。私は市立芦屋病院内科に勤務していたことがある。縁というものはどこかにあるものだ。

 小川洋子の「博士の愛した数式」には、220と284いう友愛数が出てくる。220の約数を足すと1+2+4+5+10+11+20+22+44+55+110=284となる。逆に284の約数を足すと1+2+4+71+142=220となる。

 友愛数はなかなか存在しない。小さい順に並べると220と284、1184と1210、2620と2924、・・・となる。総コレステロールの診断基準値は220mg/dlで友愛数だ。厚生労働省特定疾患原発性高脂血症調査研究班(垂井清一郎班長)1987年で、私たちの研究室(大阪大学第2内科循環器脂質研究室:松澤佑次チーフ)の脂質研究グループが中心となって作成した。

 標準体重の基準値BMI22.0も、疾病の最も少ないBMIから作成し1988年に提唱した。ふり返ってみると、私たちの研究室にとって、220という最小友愛数はラッキーナンバーだった。

 総コレステロールの基準値220mg/dlはあくまで、それより高くならないように生活習慣を改善するという目安だったが、薬物開始基準値のようになっていった。

 標準体重の22.0という数値も、一般的な目安で目標値ではない。やせている糖尿病の人に、標準体重まで体重を増やすよう栄養指導しているのを見かけるが誤りだ。

 数値基準は一度決まると、いつのまにか親元を離れ、一人歩きをし始める。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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