日本医療の将来とメタボリックシンドローム

2007年12月11日
 2007年11月末、開業している親しい友人と「日本医療の将来」について話をした。高槻に来て3年間2ヶ月に一度定期的に会い、2500円から4500円の会席料理メニューを順番に食べながら四方山話をしている。

 「明治、大正、昭和と日本の医療は上昇したり下降したり、波をうってきた。高度成長期から上昇がつづいたが、1990年代にピークとなり、2000年から下がって来ている。僕らの生きている間は、下がりつづけるのではないか」と言う。

 日本人は国民皆保険制度以来、医療は右肩上がりだという幻想を抱いている。高齢者は1人当たり3倍以上の人手と医療費がかかる。同じ総額医療費、同じ総スタッフ数で医療を行えば、高齢者の増加に反比例して医療サービスは低下する。

 「現在と同じ医療サービスが将来もそのまま続く」と考えている患者さんや家族は、これから低下していく医療サービスに不満を持つだろう。開業医も高齢になると大変のようで、「日曜日は疲れて外出せず、1日中家で寝ころんでいる」と言う。

 将来予測は難しい。私は幼い頃「将来は大蔵省(現財務省)に勤める」と言っていた。私を育ててくれた祖母は東京出身で、幼稚園の園長をやっていた。祖母の影響で大蔵省の役人が一番偉いと思っていたのだろう。50年後の今では、官僚は天下り問題などで、必ずしもいい職業ではなくなった。

 医学部志望になったのは高校2年の時だった。父の「感謝される職業は医師だ」と言われたことが大きい。40年後の今では、医師は必ずしも常に感謝される職業ではなくなった。「数十年先、高齢化社会が安定期になると、医師もまた感謝される存在に戻るのではないか」と友人は言う。

 20年来の友人は「今の日本は官僚によって支えられている。だが優秀な人材の官僚離れが進んでいる。団塊の世代の官僚がいなくなると、10年後日本の国力は低下するかもしれない」と言う。日本の医療(国)の将来を憂う30~50歳の若い医師は、政界に進出するチャンスかもしれない。

 日本の医師は高い医療レベルを保つために日夜奮闘してきたが、限界がある。日本の医療技術は進歩しつづけるだろうが、医療サービスはピークを過ぎ、これからしばらく下がっていく可能性がある。国民は自分の健康は自分で守ることになる。メタボリックシンドロームを予防して、健康寿命を延ばすことが肝心だ。

 先を読めない人の方が、先を読める人より強いかもしれない。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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