メタボリックシンドロームと飲酒

2007年11月28日
 2007年11月25日、島根県雲南市三刀屋小学校講堂で「メタボリックシンドロームとその予防」の講演をした。

 糖尿病協会島根県支部の患者さんから「糖尿病で主知医の先生から、お酒は一切飲んではダメだと言われている。メタボリックシンドロームでは、お酒は少しぐらい飲んでもいいのか」という質問があった。

 糖尿病でインスリン注射や血糖降下剤を服用している人は原則「禁酒」である。アルコールは1gにつき7kcalのエネルギーがあり、食欲を刺激して食べすぎることがある。

 メタボリックシンドロームではアルコールを飲んだら、その分食べ物を控えるようにする。お酒には動脈硬化を防ぐHDL(善玉)コレステロールを増加させ、糖尿病や動脈硬化を防ぐ作用のあるアディポネクチンを増加させる働きがあるので、適量ならよい。

 お酒の飲み過ぎはよくない。ロシア人男性の2005年における平均寿命は59.0歳と、日本人男性の78.5歳に比べ19.5歳も短命だ。劣化したウォッカの過剰摂取と、心血管疾患との間に強い因果関係があることが明らかになっている。

 講演後、佐藤利昭先生と糖尿病協会支部長さんに紅葉の名所を案内してもらった。三刀屋の麓から車で数分登ると歴史を感じさせる峯寺(みねじ)があり、隣にはよく手入れされ雪が積もると似合いそうな庭園があった。

 庭園の奥には松江藩主松平公が座っていたという休憩所があった。茅葺きの屋根は奇妙に曲がった4本の木で支えられ、今ではひっそりとしている。護摩供養が行われる場所には山に向かって6本の赤い鳥居が並び、赤く紅葉した木と溶けあっていた。

 2007年11月24日、京都にあるアサヒビール大山崎山荘美術館に紅葉を観に行った。駐車場から線路を越えると急な坂道になり、高くなるにつれ紅葉の色が濃くなっていた。羽柴秀吉と明智光秀が戦った山崎の合戦で名高い天王山の山腹に、洋館の山荘はあった。本館2階のテラスからは、紅葉の向こうに拡がる淀川の雄大な景色を眺めることができた。

 父の夢は「春は桜前線、秋は紅葉前線に合わせて、春と秋に1カ月間旅行する」ことだった。父は夢を叶えることなく、80歳まで歯科医をつづけ亡くなった。父の思いを胸に抱いて毎年春は桜、秋は紅葉の名所を複数観に行くようにしている。

 2008年から始まる保健指導は、島根県ではアウトソーシングが難しく、各市町村の保健師さんが担当されるようだ。出雲空港に向かう途中に見た宍道湖に沈む大きな夕陽は、鮮やかな橙色をしていた。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

著作権について