ヒトゲノム解析計画とメタボリックシンドローム

2007年11月20日
 2007年11月16日、マイドーム大阪で「メタボリックシンドローム」の講演をした。

 「健康診断などで収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上が高血圧だとされてきた。メタボリックシンドロームの診断基準では130/85mmHg以上となっている。どうして基準が下がったのか」と質問があった。

 高血圧の頻度は、BMIや腹囲の増加とともに上昇する。内臓脂肪が減少すると血圧も低下する。140/90mmHgあるいは130/85mmHgを境に、動脈硬化性疾患が直ちに増加するというものではない。血糖や脂質の基準も同じで、正常と異常の明確な境界があるわけではない。

 メタボリックシンドロームは、1つ1つのリスクは小さくても、それが重なると動脈硬化性疾患を来しやすいというものだ。130/85mmHgは薬剤を服用する基準ではなく、血圧に注意して食事や運動をして内臓脂肪を減らすようにしてくださいという目安と考えてもらえばよい。

 1992年6月19,20日、第24回日本動脈硬化学会(垂井清一郎会頭)がマイドーム大阪で開催された。6月19日、大阪大学細胞生体工学センター長の松原謙一先生が特別講演「ヒト・ゲノム解析計画」をされ、私が接待役となった。

 講演時間まで昼食を食べながら、12時から1時間20分松原先生とお話しをした。「私は肥満を専門として、視床下部の満腹中枢(VMH)を破壊して肥満ラットを作成しています」と自己紹介をし、脳の話をした。

 松原先生は「1000の遺伝子の内80%は未知の遺伝子だ。肝臓、肺、骨、神経、血管などのゲノムが解析されつつある」と言われる。「脂肪組織のゲノムはされているのか」と聞くと「脂肪組織のゲノムはされていない」と答えられた。

 JR摂津富田から線路沿いの道を歩く。雲が流れていく。大空を大きな円を描いて舞っていたカラスが2羽、送電塔に留まった。木は紅葉し、高槻はすっかり秋になった。東海道線をひっきりなしに電車や貨物が走っていく。たまに遠くを新幹線が駆け抜けていく。

 9段ある階段を降り女瀬川沿いの道へ出る。高齢になると膝を傷める人も多い。階段の中央に手すりがあり、足の不自由な人でも歩きやすくしてある。

 ザーザーという女瀬川のせせらぎは聞こえるが、3メートルはあるススキに覆われ水面は見えなくなっている。しばし景色を眺める。ふり返ると雲の間から、太陽の光が10数本の扇状の光線になって地上に向かって射していた。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

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