脂肪細胞と内臓脂肪測定

2007年10月24日
 2007年10月19日第28回日本肥満学会で、一般演題口演「内臓脂肪測定セッション」の座長をした。

 生体腹部インピーダンス法を用いたベルト式内臓脂肪測定装置が、数社で開発されている。内臓脂肪面積の測定値とCTスキャンで測定した内臓脂肪面積との相関もよくなり、精度も向上してきている。2008年4月からの特定健診・保健指導には間に合うようようだ。産業医フォーラムでも、簡易装置で内臓脂肪面積を測定し保健指導を行った所、メタボリックシンドロームが有意に減少したと報告されていた。

 1980年12月13日、東京千駄ヶ谷の野口英世記念会館で第1回肥満研究会が開催され、67演題があった。私は「ヒト肥満症の脂肪細胞についての研究―減量と脂肪細胞容積」を発表した。ある先生に「私達は10年前に同じ事を検討していますが、・・・」と質問された。その論文は知っていたが、私たちの方が症例数も多く精度の高い方法を用いていた。どんなにきめ細かい研究をしても、斬新な知見がないと評価されない。屈辱感を味わった。

 恩師である大阪大学第2内科垂井清一郎教授の口癖は「ノイエス(新しいもの)は何ですか」「インターナショナル(国際的)なものにしなさい」だった。荒削りでもいい。世界で誰もしていない独創的な研究をしようと思った。

 1981年12月12日、第2回肥満研究会で「CTスキャンによる脂肪組織の測定」を発表した。慈恵医科大学の大野誠先生(現日本体育大学教授)に「なかなか面白いですね。CTスキャンを用いた研究をやれば国際的に通用しますよ」と評価してもらった。

 2007年10月18日、日本肥満学会評議委員会の後、国際医療福祉大学杉原甫教授(前佐賀医科大学教授)に「徳永先生、すぐ近くに参議院宿舎予定地がありますよ。石原慎太郎都知事がテレビに写っていた工事現場だと思います。古い木もあるので、時間があれば散歩がてら見に行かれたらいいですよ」と教えて頂いた。杉原先生は病理学者で、先生の撮影された脂肪細胞の電子顕微鏡写真は、サイエンスというよりアートと呼んでもいい。自然界の成熟脂肪細胞の電顕写真は美しく、見るものを魅了する。

 10月20日午後、時間をさいて海運クラブから歩いて現場に行った。大きな木が繁り、草が茫々と生えている。坂の下にはホテルニューオータニの旧館が見える。「参議院新清水谷議員宿舎(仮称)4527平方メートル・・・2007年7月着工」と書いてあるが、まだ工事は行われていない。都心にある長年かけてできた自然は、残しておいた方がいい。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

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