メタボ基準と記者会見

2007年10月23日
 2007年10月20日日本肥満学会から、メタボ基準に関する緊急記者会見が都市センターホテル7階で開かれた。

 2007年10月14日、ある新聞に「腹囲基準の見直しがあるかもしれない」との記事が出て、医療現場で大混乱が起こる可能性が出てきたためだ。

 向かって右から、大阪大学の中村正理事長補佐、大分大学の吉松博信理事、住友病院院長の松澤佑次理事長、東京逓信病院の宮崎滋会長、京都大学の中尾一和理事の5名が着席した。メディアは29名以上出席、撮影はNHKともう1社来ていた。緊張感が漂う。

 1990年9月4日東京内幸町にある日本プレスセンター9階で、共同記者会見をしたことを思い出す。第6回国際肥満学会について九州大学の大村裕会頭、坂本美一広報副委員長、プログラム委員である私の3名が会見した。内臓脂肪型肥満について詳しく説明した。演題数は多かったが、メディアの関心は低く読売新聞、朝日新聞、毎日新聞の3記者のみで和気あいあいとした会見だった。経済が絡むと、こうも違うものか。

 2007年10月20日11時00分からの会見で「日本肥満学会は肥満症、内臓脂肪型肥満の診断基準は、新しいエビデンスが出るまでは、変更する予定はない」という緊急メッセージが出された。最初にNHKの記者から質問があり、毎日新聞、共同通信、読売新聞、最後に朝日新聞と9社から質問があった。会見は40分の予定であったが、各社の熱心な質問で11時46分まで延びた。

 鋭い質問もあったが、海外の腹囲基準と比較して日本の基準が違うのはおかしいという質問があった。それを聞いていた人が私に「日本肥満学会は奥床(おくゆか)しい。メタボリックシンドロームの概念が日本から発信されたことを知らない記者がいる。脂肪組織が善玉や悪玉物質を分泌して動脈硬化を起こしているという病態を、日本が解明したということをもっと強調してもいいのではないか」と言われた。

 私はメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を提唱した者の1人として、「国が内臓脂肪型肥満の概念を導入した健診・保健指導予防を行われることは光栄の至りである。動脈硬化性疾患を帰結としたメタボリックシンドローム診断基準を、経済も絡んだ特定健診・保健指導にそのまま導入したために異論が出ている。

 今直ちに変更すれば2008年4月からの健診・保健指導などに大混乱を起こす。腹囲はあくまで目安であり、内臓脂肪が増えるかどうか気にすることが最も重要なことだ。腹囲基準に関しては、十分なエビデンスを集めてじっくり議論すればよい」と考える。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

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