食料自給率とメタボリックシンドローム

2007年10月15日
 2007年10月20日、第29回日本肥満学会のランチョンセミナー10は、みずほファイナンシャルグループ大阪健康開発センターの廣部一彦先生がされる。タイトルは「メタボリックシンドローム対策の実際―内臓脂肪リスクを意識させた保健指導の取り組み」で私が座長をする。

 廣部先生は大阪大学第2内科循環器脂質研究室の2年先輩で、循環器が専門だった。全国に配布された針金で作った冠動脈の心臓模型は、廣部先生が大阪府立成人病センター時代に作られたものだ。

 病棟の指導医をされていた頃、研修医から「困ったときの廣部先生頼み」と言われていた。外科など他科との連携や、研修医と看護師とのトラブルなどを解決されていた。

 私が高槻社会保険健康管理センターに就職できたのも、廣部先生のご尽力によるもので感謝している。私にとって現在の職場ほど、自由で制約のない所はこの20年なかった。長年産業医をされているだけあって、どの人がどの職場に向いているか適切に判断される。

 2007年10月11日の新聞に「食料自給率、30%台に」の記事が載っていた。8年間40%だった食料自給率が昨年39%に下がったとある。主要先進国における2003年の食料自給率はオーストラリア237%、カナダ145%、米国128%と高い。ヨーロッパでもフランス122%、ドイツ84%、英国70%と日本の食料自給率に比べ多い。

 この8年間で野菜の自給率は84%から79%へ5%減、いも類は85%から80%へ5%減、魚介類は57%から52%へ5%減となっている。逆に小麦は9%から13%へ4%増、大豆は3%から5%へ2%増、BSEの影響で牛肉は35%から43%へ8%増となっている。

 牛肉の自給率が増えることは必ずしも喜ばしい面ばかりではないという。飼育に要する飼料の75%が輸入されているからだ。2005年の日本における飼料需要は2億5212万トンで、そのうち国内供給量は6226万トンとなっている。

 牛肉1kg作るのに、飼料は10kg必要になる。飼料10kgのうち、日本国内生産分は2.5kgで、残りの7.5kgは海外からの輸入である。船舶での輸送とすると、海外から1kgの肉を運ぶか7.5kgの飼料を運ぶかの違いになる。日本で牛を育てることは、牛肉を輸入したときの7.5倍のディーゼル燃料を使うことになる。それだけ排気ガスも多くなる。地球環境にとって、飼料も日本国内で生産する方が望ましい。

 長い夏がおわり、一気に秋になった。今年の秋は短そうだ。高槻にある田圃の稲穂も実ってきた。農業は国の生命線だ。食料自給率を上げる根本的な対策が必要だ。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

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