ニートとメタボリックシンドローム

2007年9月 4日
 2006年から始まったメタボリックシンドローム対策などの医療制度改革は、1961年の国民皆保険体制の確立、1982年の老人保健法制定以来の大改革である。少子化で労働人口が減少すると、医療費が益々厳しくなる。

 青年が亡くなった。一流大学を卒業したが、希望の就職口が無くニートだったという。「例え気に入った就職口があっても、新卒の若い人といっしょにやって行かなくてはならない」と悩んでいたという。親より早く亡くなるほど親不孝なことはない。

 ニートとは「Not in Education, Employment or Training」の略で、教育を受けず、労働を行わず、職業訓練を受けていない人を意味する。厚生労働省は「労働、家事、通学をしていない15~34歳の若者」としている。2003年日本には64万人存在し、労働人口の減少と自殺の増加が懸念されている。

 病気や怪我でニートなのは4分の1で、他は希望の職業がないなどが理由である。新卒なら就職口も多いが、30歳近くになるとなかなか希望の職業には就きにくくなる。

 友人は「ニートが増えたのは、我慢することができない若者が多くなったためではないか。叱った言葉をそのまま受け、奥にある言葉の意味を理解してくれない」と言う。

 どんな仕事も興味を持ってやっていれば、楽しくなる。今は苦しいかもしれないが、仕事をしていれば幸せを感じるときが来る。生きていれば、今の悩みなどいつか忘れる時が来る。

 今の状況は辛い事ばかりかもしれないが、いつまでも続きはしない。これから長く生きて、時が経てばわかる。悩んでもいい。生きていればいい。人生は、今君が思うより長いものだ。ニートがいつまでもニートとは限らない。時代が変わればいい職に就くことも出来る。

 一生このままではない。完璧な人生などない。世間に冷たくされても、侮辱され罵(ののし)られても、生きていればいつか幸せを感じるときが来る。死んでしまっては、幸せを感じられない。

 司馬遷は友人を庇い漢の武帝の怒りに触れ、宮刑を受けたが、50歳で獄から解かれ55歳で世界一とも呼ばれる歴史書「史記」を完成させている。「禍福は糾(あざな)える縄の如し」史記にある言葉だ。人生とはそういうものだ。誰にでもどん底の時が来る。死んでどうする。禍(わざわい)の中に福があり、逆に絶好調の時にも禍の種は潜んでいる。

 ニートよ。1日1度は陽の光を浴びて、大空を見上げるがいい。カンカン照りの中、スズメは飛び、アリは蠢(うごめ)き、水路では小さな魚が群をなして涼しそうに泳いでいる。まだまだ若い。生きて働いて、いろいろなことを実感するがいい。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

著作権について