老老介護とメタボリックシンドローム

2007年7月30日
 2007年7月26日厚生労働省は、平成18年の日本人平均寿命が男性79.00歳、女性85,81歳と過去最高を更新したと発表した。女性は22年連続世界1位、男性はアイスランドに次いで2位となる。

 メタボリックシンドローム対策の目的の1つは、老人を介護できる元気な老人を増加させることだ。2005年20.2%だった高齢者人口は、2020年には29.2%と約3割に増加する。高齢化社会を迎え、健康な老人が自立できない老人を介護する時代になってきた。老老介護だ。高齢者は温泉旅行を好む。しかし、浴場では常に転倒という危険が伴うので、十分な注意が必要だ。

 2007年7月15日山口市湯田温泉、維新ゆかりの宿「松田屋」に85歳の母を連れて宿泊した。松田屋は高杉晋作、木戸孝允(きどたかよし)、西郷隆盛、大久保利通、坂本竜馬、伊藤博文、大村益次郎、山県有朋、井上馨、三条実美らが、倒幕画策の舞台として出入りし入浴した。坂本竜馬は再三宿泊し、長州と薩摩の連合の手がかりをつけており、家族に宛てた直筆の手紙もある。

 松田屋の回遊式庭園の奥の高い所に、西郷隆盛、大久保利通、木戸孝充が会談した会見所がある。会見所には1枚の楓(かえで)の板からできた机がある。机の奥に楓の根っ子からできた固定した椅子が3つ、手前に移動式の椅子が3つある。3人はどういう位置に座ったのだろう。客人の西郷と大久保が奥に、迎える木戸が手前に座ったのだろうか。夕食の時、仲居さんに聞くと「昔は奥の椅子は2つで、奥に入り口があったが、庭がよく見える奥に西郷と大久保が座り、木戸が手前に座った」と言う。私の読みは当たっていた。

 屋内には高杉晋作が、楓の幹に彫った「憂国の楓」が展示してある。盡国家之秋在焉(国家に盡くすのときなり)と書いてあり、鏡像のように黒い字が左右反対になっている。仲居さんに聞くと「楓の木に彫った表面を巻き込んで覆った左の面は、字が左右逆のように見える。右の面が実際に彫った字だ。田んぼの中に置いてあって、薪にするとき偶然木が割れて見つかった」と言う。もう1度見に行くと、仲居さんの言った通り右の面に字が彫ってあった。

 「孝行をしたい時には親はなし」歴史好きな父親を、松田屋に連れてきたら喜んだだろう。「いつまでも、あると思うな親と金、ないと思うな運と災難」父がよく言っていた言葉だ。メタボリックシンドロームが脚光を浴び私に運は向いてきたが、2度転倒し大怪我をするという災難にあった。

 2008年はメタボリックシンドローム対策維新の年であると同時に、老老介護の始まる年ともなる。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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