メタボリックシンドロームと喫煙

2007年1月16日

 平成18年12月26日厚生科学審議会から健康日本21の中間報告が出された。喫煙率(男性43.3%、女性12.0%)、禁煙希望者率(男性24.6%、女性32.7%)である。

 一般にはタバコを吸うと痩せるというイメージがある。実際、動物実験ではタバコの煙を強制的に吸わせると、肩甲骨の間にある褐色脂肪での熱産生が高まり、エネルギーを消費する。人でもタバコを1箱吸うと茶碗でご飯1杯分ぐらいのエネルギーを消費する。

 厚生労働省でCTスキャンを用いた大規模な疫学調査が行われた。この調査で予想外の結果が出た。BMIが25以上の肥満でかつ内臓脂肪面積が100平方センチメートル以上の内臓脂肪型肥満者では、正常者に比べ喫煙者の割合が男性で1.73倍、女性で1.50倍と高くなっていた。

 海外の報告でも禁煙すると体重増加が認められるものの、内臓脂肪の指標であるウエスト/ヒップ比は減少し、禁煙後に喫煙を再開すると体重そのものは減少しても、ウエスト/ヒップ比の増加が認められたという報告がある。

 喫煙者は本人の健康に対する自覚がなく、運動をしないなど肥満になりやすい悪い生活習慣を持ち合わせているとともに、タバコの成分が直接内臓脂肪を蓄積させ、内臓脂肪型肥満になると考えられる。

 タバコを止めるといっても、そう簡単には行かない。社会で生きていく上でストレスはつきものだ。禅はお寺に行かなくても、椅子に座っていてもできる。会議などで闘った後、その場で椅子に座ったまま身体の力を抜き耳、肩、骨盤が真っ直ぐなるように姿勢を正し、両手を大腿の上に置く。

 鼻から下腹部へ深く息を吸った後、口の横を少し開いてゆっくり長く息を吐く。目を閉じると眠くなるので、目は半眼とする。繰り返しているうちに心は穏やかになり、無の境地となる。

 禁煙する時には、タバコ1箱につき、ご飯1杯分の食べ物を減らさないと体重は増加するので注意が必要だ。喫煙はメタボリックシンドロームへの道をひた走ることになると自覚し、タバコの代わりに大気を吸って、心筋梗塞や脳梗塞が少しでも減少するよう心がけることが必要だ。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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