肥満格差社会とメタボリックシンドローム

2007年1月 5日

 肥満格差社会について欧米では人種、性別、地域、経済状態に起因する差が歴然と存在することが、早くから指摘されていた。日本は比較的単一な民族で、国民総中流意識があったため、肥満格差社会について論じられることは少なかった。

 文部科学省は平成18年12月21日、子供の肥満には地域差があり、15歳の肥満傾向が16%を上回ったのは青森、秋田、山形、徳島で東北地方に多く、東高西低となっていると発表し、肥満格差社会の問題が新聞の大きな見出しとなった。このままだと40年後これらの地域でメタボリックシンドローム(内臓脂肪蓄積、糖尿病、高脂血症、高血圧)が増加することが予想され、肥満対策が必要である。

 2004年の成人347万人(男性228万人、女性119万人)を対象とした肥満調査で、男性では沖縄が最も肥満の頻度が高く、北海道、徳島、青森、秋田の順に、女性でもやはり沖縄が1位で青森、徳島、宮城、福島の順に肥満が多くなっている。沖縄は、以前は長寿の県として知られていたが、2000年沖縄県男性の平均寿命は26位に転落し、26ショックと呼ばれ、50歳代後半の沖縄県男性の心筋梗塞の死亡率は全国1位となっている。

 肥満の多い地方の県民1人当たりの所得は、上記いずれの県も下位に位置している。所得が直ちに肥満に結びつくとはいえないが、沖縄の県民1人当たりの所得は東京の半分以下で、東北地方で肥満の頻度が高いのは1つには経済的要因があるのかもしれない。先進国で日本と同じ島国の英国でも、肥満格差社会が問題となっており、イングランドではロンドンを含む南部地方では肥満が少ないが、北部地方では肥満が多くなっている。

 都市と郡部間の肥満格差については国立健康・栄養研究所の吉池信男主幹らが大都市と郡部を比較し、日本では郡部で肥満の増加が著しいとしている。都市部の繁栄に対し、郡部の荒廃は著しい。国の政策にかかわる人は、これ以上郡部を荒廃させない政策を執られることを願う。郡部の自治体は「肥満は健康によくないことを認識し、生活習慣を改善すべきだ」という啓蒙活動が必要である。

 平成20年4月からメタボリックシンドロームに対する健診・保健指導が開始される。有能な保健師、管理栄養士、健康運動指導士を揃えた大企業・自治体がメタボリックシンドロームを減少させ、企業間・地域間の肥満格差社会が生まれるのではないかと推察される。

 肥満格差は食文化、運動習慣とともに経済・社会格差とも密接に関連しており、今後メタボリックシンドローム対策における、肥満格差問題は大きな課題になるであろう。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

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