やせ薬 と 肥満

2007年1月30日
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 日本で認可されている食欲抑制剤はマジンドール(サノレックス)のみで、保険適応があるがBMI35以上の人で3ヶ月間しか使用できないという厳しい制限が付いている。

 平成13年11月1日40歳代の女性が意識混濁、黄疸、全身倦怠感で入院してきた。GOT472、GPT441、総ビリルビン15.4mg/dlと上昇。肝臓は萎縮し、肝機能が低下している劇症肝炎だ。

 その患者さんは、やせ薬「千之素こう嚢」を服用していた。それ以前の平成13年7月23日に黄疸で入院してきた60歳代の女性も同じものを服用していた。その女性もGOT1330、GPT2095、ビリルビン6.4mg/dlと重症肝炎だった。

 2人とも同じやせ薬「千之素こう嚢」を服用していた。どんな組織がバックにあるかもしれない。「先生、公表すれば命を狙われるかもしれません」研修医と女医さんが脅えた顔で心配する。

 「50万円も出せば人を危める人間はいるらしい。でもこれは放置できない問題でしょう」朝川秀樹内科部長が言った。「放っておけば大変な犠牲者が出ますよ」福井威志内科医長がつづいた。

 平成13年11月13日、厚生労働省医薬安全局麻薬対策課に連絡し報告書を出した。翌14年5月慶応大学病院で60歳代女性の死者が出た。7月12日「ダイエットに潜む危険」と題する記事が新聞の一面トップに出て大騒ぎとなり、全国に被害が拡大した。

 福生病院の中谷矩章院長らが分析され、食欲抑制剤フェンフルラミンが含まれていた。フェンフルラミンは薬事法で禁止されており、中国の業者が薬剤として検出されないよう亜硝酸を加えたため、発癌性の強いN-ニトロソ化合物ができていたことがわかった。

 平成17年8月29日第3回日本肥満学会の肥満症サマーセミナーで佐藤祐造愛知学院大学教授が「怪しげなやせ薬は毒である。漢方薬と区別しなくてはならない」と断言された。本当にそうだ。東洋医学を真剣に行っている人達の妨げになる。

 何十億円、何百億円のお金が動く食品業界では、健康食品の効果が全くない、あるいは害があると公表されると死活問題となる。公的研究所の先生は「健康食品について公表する時には、どんないやがらせが来るかもしれない。命を狙われることも覚悟して公表している」と言われた。
 日本には命が狙われていることを覚悟して、国民を守ろうとしている医師達がいる。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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