糖尿病教育と自治体病院

2007年1月22日

 糖尿病教育は厳しさか優しさか?厳しく接した方がよい患者さんもいるし、そうでない患者さんもいる。

 看護師さんからは「もっと厳しく患者さんを指導して下さい」と言われることがあったが、厳しい先生の糖尿病外来から、私の所に患者さんが流れてくる。私が見放したら、その人はもう病院には来なくなり、放置すれば合併症もでるかもしれない。

 誰でも受け入れる私の肥満外来は、いつしか糖尿病患者であふれ、午前9時から開始して午後4時すぎに終わるようになった。11時30分で締め切られる受付時間で、4時間待っている患者さんを帰すわけにもいかない。

 15分間の昼食時間をはさんで、7時間以上硬い椅子に座りつづける生活がよいはずはなく、体を崩してしまった。自治体病院で糖尿病外来をつづけられている先生の多くが疲労困憊し、同じような境遇にあるのではないだろうか。正当な不平・不満は、大きな声で言っていい。

 私はラットの実験をしていたが、ラットが研究室に来ると3日間ハンドリングをする。軍手をはめて実験用の白衣との間にラットを抱いて、5分間撫でてやる。

 1日目ほとんどのラットが糞と尿を白衣の上にするが、3日間ハンドリングをすると、手で抱いても糞や尿をしなくなる。毎日体重を量るとき、ラットの方からこちらに来て、60匹の体重測定に1時間以上かかる所が20分ですむようになった。

 サルの飼育はラットと違って、まず後ろから両腕を羽交い締めにし、誰がそのサルの主人かしらしめる。サルは主人には忠実だが、他の人には襲いかかるようになる。

 ヒトはサルに近いのか、ラットに近いのか。インドに旅行した時、ジャイプールの街では、牛も象も駱駝も人と同じように一緒に歩いていた。輪廻思想でヒトも次は牛に生まれてくるかもしれないと思い、動物を大切にしている。ヒトも動物も一緒なのかもしれない。

 冬は京都あだしの念仏寺がいい。底冷えする朝の空気を、腹いっぱい吸って、ゆっくりと吐き出していく。あだし野一体に葬られた8000体の無縁仏がある。大きな石仏、小さな石仏、背のたかいもの、低いもの、どれ一つ同じものはない。
 糖尿病教育も、人それぞれに適した指導があると思う。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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